講義No.10457 政治学

「平成の大合併」を経た、新たな「地方の時代」の自治を考える

「平成の大合併」を経た、新たな「地方の時代」の自治を考える

「平成の大合併」で起こった変化

平成17~18年ごろをピークに推進された政策に「平成の大合併」があります。人口減少や高齢化が進む小規模市町村を合併させるというものです。これによって、約3200あった市町村は、平成26年には1718まで減少しました。
当然、現場では、さまざまな変化が起こりました。町役場や村役場がなくなり、それまで地域住民の身近な要求を実現してきた行政の機能が失われました。学校の統廃合が進み、町や村の独自性が失われ、地域自治の担い手が育ちにくくなったのです。また議員定数が減るとともに、人口が少ない地域からは議員が当選しにくくなり、地域の課題を解決する力が弱まりました。

住民自治の再構築が課題に

もちろん合併により、行政単位が広域化することで財政効率が上がるメリットがあります。しかし、それまで自治の基盤となっていた「地域の人々と行政との密接なつながり」が、合併によって大きな打撃を受け、住民自治の崩壊につながったことは否定できません。
だからといって、合併前に戻ることはできません。現在の自治の仕組みを再構築し、地域の再生につなげることが、地方自治体の重要な課題です。これは、合併自治体だけではなく担い手不足に悩む全国の地方自治体に共通するテーマとなっています。

「新しい地方の時代」を見つめて

「平成の大合併」の後、失われた地域住民と行政とのつながりを回復するために、さまざまな政策が提言され、実践されてきました。「住民自治協議会」の提案、コミュニティ支援の模索など、多くの試みがあります。そうした事例を調査・検証するとともに、国の政策が現場にどのような影響を与えるのかを実証的に明らかにし、より良い地方自治のあり方を模索する必要があります。
新型コロナウイルスの流行以降、あらためて人口密集の弊害、自然と共生する地方生活へ関心が高まっています。新しい「地方の時代」の到来を展望した地方自治の研究が期待されているのです。

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岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 准教授 役重 眞喜子 先生

岩手県立大学 総合政策学部 総合政策学科 准教授 役重 眞喜子 先生

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地方自治論、行政学、コミュニティ政策学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校時代は「どんな職業に就きたいか」より、「どんな生き方をしたいか」「どんな大人になりたいか」をつかんでほしいと思います。そのためには、自分が好きなこと、得意なことに気づくことが、とても大切です。これは、一人ではなかなかできません。人との交流のなかで、ほめられたり、失敗したりしながら、自分の得意なことがわかってきます。
ぜひ、多くの人、さまざまな人に出会って交流してください。「あんな大人になれたらいいな」という出会いがあれば、きっと未来が見えてくることでしょう。

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大学は「知識」を得る場であるだけではなく、「人生の目的」を考える場であり、これからの人生で自分は何をなすべきかを探求する場でもあります。人はそれぞれ固有の素質と能力を持っています。それをいかに見出し、育成していくかが教育の最大課題であると考えています。この大学での貴重な学習期間に、自己の能力と個性を伸ばし、適性を見出すことに努めてください。本学の教職員は、全力を挙げてこれに協力します。