「矛盾」まで表現できるようになった3DCGの描画技術
3DCGにもいろいろある
ゲームや映画、CMなどで目にする映像ではCGが花盛りですが、特に3DCGは、ハリウッド映画でもおなじみのように、リアルな映像を作る技術が進み、もはや行き着いた感じがあると思うかもしれません。しかし、その方向性は実は3DCGのひとつに過ぎないのです。3DCGには、いわゆる「リアルな表現」(フォトリアル)のほかに、線画やアニメ調の映像など、いろいろな表現方法があり、それぞれ場面や用途に応じて適切な方法が選ばれます。CGとは自分の頭の中にあるイメージを伝える手段なので、リアルだけが3DCGではないのです。
頭の中にしかないイメージを伝える
この分野で最先端の技術のひとつが、「頭の中にしかない映像を表現する」という技術です。あなたは「不可能立体」を知っていますか? 人間が見ると立体のように見えるけれども、実はだまし絵になっていて、現実には存在し得ない立体映像のことです。これをCGで描画しようとするのは技術的に大変難しくなります。なぜなら、不可能立体は矛盾のある立体映像ですが、コンピュータは「矛盾を表現することが苦手」だからです。しかし、3年ほど前、不可能立体をコンピュータで表現する技術が開発されました。これは、光を「ワープ」させて、本来手前にある立体を、背後にあるように、いわばコンピュータをだますのです。従来静止画だった不可能立体が、この技術で回転させることができるようになりました。また、どこに矛盾を起こさせるか1クリックで簡単に操作できることもこの技術の重要な点です。
新しい世界観と出会うのを待つ
不可能立体の映像は、人が思わず身を乗り出して注視するので、広告効果が大変に高いと考えられています。また、この技術自体が新しい映像を表現するものなので、現在、新しい世界観と出会うチャンスを待っている段階ですが、将来、ハリウッドスターが不可能立体の中で活躍する映画ができるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 教授 宮下 芳明 先生
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