教科書では習わなかった明治維新の実像とは?
東京は正式な日本の首都ではない?
時代が大きく動いた明治維新期には、戊辰(ぼしん)戦争で旧幕府側が負けて新政府側が勝つと、天皇のいる都を京から江戸に移す計画が持ち上がりました。勝った新政府側が公家などの保守派から天皇を引き離そうと考えたのです。さらに江戸には再利用できる広大な大名屋敷跡地があり、貿易に便利な横浜港に近いという理由がありました。しかし、「遷都」には保守派が反対するため、一時的に都をつくる意味の「奠都(てんと)」としました。それ以降、なし崩し的に江戸・東京は日本の首都という認識になりましたが、実は「日本の首都は東京」だと、法令ではこれまで一度も書かれていないのです。
戊辰戦争に参加した神職たち
また幕末から明治は、それまで武士が行ってきた政治に民衆が関心を寄せた時代でもありました。戊辰戦争は武士以外の民衆も参加しましたが、富士山を御神体として崇める富士信仰の御師(おし)や神社の神職までが部隊をつくって新政府側に参加したことがわかっています。しかし、彼らは「尊王」「攘夷(じょうい)」の思想に共感して戦ったわけではありません。史料によると、幕府が神社よりも寺を保護したため神職は僧侶よりも立場が低く、御師たちは新興宗教のように弾圧されてきた背景があり、幕府への不満が募っていました。自分たちの命や暮らしを守るために彼らは戦ったのです。
敗者や民衆の考えを知り、維新の意味を探る
これまで教科書に書かれた歴史は政治の動きを中心にしたもので、勝者を正当化して、敗者を悪者にしたものだとも言えます。しかし中立的な視点に立てば、敗者にも言い分はありますし、政治に直接関わらずに生きてきた民衆も大勢います。そのような敗者や民衆の考えを知るには、手紙や日記など多様な史料を探し当てて分析することが大切です。当時生きていた人たちの考えを知ることで、表舞台ではわからない社会全体の動きや、明治維新という大変革の本当の意味を知ることができるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
駒澤大学 文学部 歴史学科 教授 小泉 雅弘 先生
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