教育における家庭環境の影響と解決への動き
データに表れる教育現場での貧困問題
子どもの貧困が教育に及ぼす影響が深刻化しています。統計上の「相対的貧困ライン」と呼ばれる年収約200万円(3人世帯の場合)以下の家庭が増えています。また、ひとり親家庭は両親がそろった家庭よりも4倍以上も貧困に陥りやすいと言われています。そして困難な家庭環境にある子どもの学力の低下や不登校率の高さがデータとして明るみに出てきました。原因としては、保護者が仕事に追われていたり、病気だったりしてなかなか子どもに手をかけられないことや、学習の習慣ができていないことのほか、周囲にも学歴の高い人が少なく、進学への興味や関心もないため学習意欲がないことなどが考えられます。このような格差はどのように克服していけばいいのでしょうか。
スマホやゲーム機を持っている子こそ要注意
教育の現場では長らく「子どもたちは皆平等で、豊かな可能性を持っているもの」として、子ども一人ひとりの家庭環境の問題が学力に結びつくことを口に出すことがはばかられていました。また貧困の実態も把握しづらい部分もあります。例えば、子どもがスマートフォンやゲーム機を持っている、毎日お菓子を買い食いしている、といったケースは、むしろ困難な家庭環境にある子どもに多く見られる現象です。そして、それが低学力とも結びついているのです。
調査で得られたデータの活用
しかし、貧困と、成績や出席状況との関連が、調査によって明らかにされたことにより、学校や教育委員会、NPO法人などが動いて、生活保護や就学支援のアドバイスをしたり、子どもの学習支援をしたりといったサポートを行う動きも出てきました。
「教育社会学」は、調査によって実態に迫り問題に肉薄する学問です。調査で得られたデータを現場で活用することが望まれます。困難な状況にある子どもの支援策の策定や予算の確保には、調査で得られたエビデンス(根拠)を提示する必要があります。現場から得られたデータは、問題の解決のための貴重なエビデンス(根拠)となるのです。
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先生情報 / 大学情報
日本女子大学 人間社会学部 教育学科 教授 藤田 武志 先生
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