砂漠で食糧を生産して、緑化する
砂漠で育つ、野生のスイカ
アフリカ南部のカラハリ砂漠には、野生のスイカが自生しています。砂漠ですから、水の少ない乾燥地です。このような過酷な環境で育つ野生のスイカには、どのような秘密があるのでしょうか。
野生のスイカは根がとても長く、地中深くから水分を吸収することができます。そのため雨の少ない砂漠地帯でも育つことができるのです。また野生のスイカの葉の表面は少し白くなっています。これはワックスを塗ったような状態で、光を反射できるようになっていて、強い日照の砂漠の環境で余分な光を吸収せずに、ストレスに強い性質を持てる仕組みです。
遺伝子組換えで、乾燥地でも育つ
そしてもっと強いスイカを生産するために、遺伝子の研究が行われています。厳しい環境の中で生き抜いていくための、根を長く伸ばしたり、ワックスを生み出したりする遺伝子の仕組みを解明すれば、ほかの植物にも応用できます。
例えばトウモロコシやイネなどの主食となる植物に、乾燥地でも育つ野生のスイカのような遺伝子を組み込めば砂漠でも栽培することができます。イネは日本では水田で栽培されていて、大量の水が必要です。しかし、すでに水が少なくても育てられるイネの品種が遺伝子組換えで作られています。また技術的にはまだ進んでいませんが、パンやパスタの原料となる小麦の遺伝子組換えも研究されています。
砂漠を緑化し、食糧危機に備える
近い将来には地球の人口が増加し、食糧危機の時代が来ると言われています。そのため、現在は食糧生産には向いていないと言われている砂漠などの乾燥地帯でトウモロコシやイネ、小麦などが収穫できれば、世界全体として食糧不足の改善に役立ちます。また、地球環境の悪化を食い止めるために、砂漠の耕地としての緑化は重要な意味を持っています。さらに遺伝子組換えで、バイオ燃料の原料となる「ジャトロファ(ナンヨウアブラギリ)」などの植物の栽培にも期待が集まっています。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 農学部 生命環境農学科 農芸化学コース 教授 明石 欣也 先生
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