ミルクの中のすぐれた成分
子牛が生まれたら初乳を急いで飲ませる
ミルクの中に含まれるラクトフェリンという成分。CMなどで耳にしたことありませんか。牛では子牛を生んですぐの初乳というものには1リットルあたりに1gぐらい、人間だとその6倍の6gぐらいの高濃度で含まれています。これだけ高い濃度で存在するものはほかには免疫グロブリンだけです。こんなにたくさん入っている意味はなんだろう、という疑問から研究がスタートしました。それまでに知られていたラクトフェリンの効果は、鉄分を吸収しやすくする、免疫を高める、細菌を殺すなど、主に免疫系への影響でした。ところが研究が進むにつれ、痛みを抑える鎮痛作用、ストレスを軽くする抗ストレス作用、炎症を抑える作用など、神経系の発達にも影響を及ぼすことがわかってきました。
人間の場合、免疫はすでに赤ちゃんがお腹の中にいるときから胎盤を通じてある程度伝わっています。もちろん、母乳を飲んだ方がいいのは言うまでもありません。牛の場合は生後16時間以内に初乳を飲まないといけません。生まれてすぐは、腸の粘膜のふるいが大きいのでたくさん吸収できるのですが、16時間経つとぴたっとくっついて、外から入ってくるものを防ごうとするからです。腸は病原菌を防ぐバリアの役目を果たしています。免疫たんぱくは大きい分子なので、16時間以降はこのバリアを通過できなくなるのです。ですから、生まれて16時間以内に最低1回は初乳を飲ませる必要があります。
医学の進歩につながる
このラクトフェリンを精製したものが、すでにサプリメントとして販売されています。たんぱく質なので繰り返し注射するとアレルギー反応を引き起こす可能性があり、まだ注射で使える状態にはなっていません。今後、たんぱく質を改良し、アレルギーを起こさない形で使えるようになる可能性はあります。このように動物の研究を通じて、人間の疾患にも応用できる薬ができることは珍しくありません。動物も人も健康になれる研究が獣医学科で行われているのです。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 農学部 共同獣医学科 教授 竹内 崇 先生
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