ジェンダーの視点から国際化する介護労働者の支援を考える
「介護男子」の裏にあるジェンダーバイアス
近年、高齢者福祉の現場で働く「介護男子」が注目を集め、人気となっています。しかし、実際には介護職は女性がおよそ8割を占めるのが現状です。日本には「介護は女性の仕事」という固定観念、つまりジェンダーバイアスがあって、非正規雇用も多く、低賃金の不当評価が続く歴史があります。2000年に介護保険制度が導入され、男性の参入が増えてきた今も、いかに社会的評価を高めるか、離職率を減らすかといった課題が山積しています。解決するには、職員が充実して働ける環境が不可欠です。現場調査で明らかになった離職要因となる組織のサポート体制を整えることでストレスが低減されて、離職が減るといった効果も表れ始めています。
人権や地域政策といった課題も
また少子高齢化により、介護業界では慢性的な人材不足問題を抱えており、政府の方針によって外国人労働者が増えています。受け入れには、日本語の学習や介護の知識を習得していることが前提ですが、そこでは宗教や文化習慣の違いへの対応が必要です。さらに、地域住民が外国人の居住に拒絶反応を起こして、住居の確保ができないケースなど、人権に関わる課題もあります。解決には、介護福祉業界だけでなく、地域政策も含めて考えなければなりません。すべての人が安心して働ける環境をつくるには、ジェンダーや人権、政策、法律、歴史といった多様な観点から、解決策を検討する必要があるのです。
社会の課題解決を目的とした起業も
高齢者福祉の課題に対して、注目されているのが「社会起業家」です。社会起業家とは、ビジネスの手法を用いて社会問題の解決に向けた事業や政策を企画立案し、実行できる人のことをいいます。自由な発想やアイデアで福祉に貢献する新世代のリーダーになると期待されています。起業をするには、現場を知ることがとても重要です。高齢者福祉に関わる現状を知り、取り巻く環境や課題を発見し、多角的な視点から解決策を探ることから、よりよい環境をつくるためのヒントが得られるはずです。
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先生情報 / 大学情報
関西学院大学 人間福祉学部 社会起業学科 教授 澤田 有希子 先生
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