もずくを食べてサンゴを守る? 「双方向」の食の流通とは
サンゴを守る「もずく基金」
あなたは自分の食べる物を、どのようなところで作られて、環境にどう影響するかを知ったうえで選んでいますか? 沖縄県の恩納村(おんなそん)漁協が育てる海藻のモズクを原料にした商品には、「もずく基金」というラベルが貼られています。このラベルが貼られた製品を購入するたびに、数円がサンゴの保全のために恩納村に送られる仕組みです。海人(沖縄では漁業者をこう呼ぶ)はサンゴが健全な状態だと、モズクがよく育つことを経験的に知っています。サンゴの持つ海水をろ過する働きが活発になれば水の透明度が上がり、水中に日光が入りやすくなることから、モズクの生育が促進されると言われています。そのため、恩納村漁協ではサンゴを増やす活動をしているのです。
「一方向」から「双方向」な流通へ
通常の流通は、生産者から消費者まで一方向に流れています。しかし、もずく基金のような取り組みにより、消費者が生産者の課題を一緒に解決できるような双方向性のある流通が作り出せます。生産者や生産地との距離が離れていても、だれがどんなふうに作っているかを知ることで、生産者を応援する気持ちになり、例えば食料廃棄の問題の解決も期待できます。このような地域ごとの取り組みとあわせて、持続可能な漁業で獲れた水産物であることを認定するMSC(海洋管理協議会)などの国際的な認定制度を利用することも、生産者のメッセージを消費者に伝えるためには有効な手段です。
新しい食の流通システム
世界中で、食品を安く大量に仕入れて売るような流通の形態が構築されてきました。しかし、そのシステムは決して盤石ではありません。アメリカでは、コロナ禍の混乱により流通が滞り、スーパーでは牛乳が不足しているのに生産地では廃棄されていました。日本の農地の4割が中山間地域にありますが、そのような場所では人手不足や高齢化から休耕地が増えており、食の安定供給が不安視されています。環境に配慮し、地域の課題を解決する持続可能な食の流通のための仕組み作りが、今必要とされているのです。
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鳥取大学 地域学部 地域学科 地域創造コース 准教授 大元 鈴子 先生
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