講義No.10830 経営学・商学

消費者としてのサッカーファンは不思議な存在?

消費者としてのサッカーファンは不思議な存在?

ミクロとマクロ、2つの見方

「消費者行動論」とは、商品の購入に付随する消費者の行動や心理を学ぶ学問分野です。この学問では2つの見方があります。ミクロの見方は、「個人としての消費者行動論」と呼ばれ、消費者個人が商品を購入するときの、ニーズ、情報の獲得方法、選択肢の比較、購入、使用、そして満足するというプロセスを説明するものです。一方、マクロの見方は、「社会的な消費者行動論」と呼ばれます。話したい相手と同じ携帯電話会社と契約するといったように、2人以上いる条件で初めて消費者の行動がわかるもので、スポーツ観戦の一部はそれにあたるかもしれません。

サッカーファンは非合理的な消費をする?

サッカー観戦の経験者に「同じ価格であれば、応援しているチームが勝つ試合を観戦したいですか」とアンケートすると、当然「その方が良い」と思う人が大半でした。これは、同一価格ならば良質なサービスが欲しくなる経済的合理性に基づいています。
しかし、「本当にそういう基準で普段チケットを選んでいますか」と質問したところ、「勝者が前もって予測できるような試合は面白くない」という回答も得られました。これが例えばホテルを選ぶ場合なら、アクセス、部屋、食事など、事前に正確な情報を欲しくなるでしょう。ところが、この回答は正反対で、むしろ情報がないことに魅力を感じて、それが満足につながるという非合理的な消費行動のように見えます。個人としての消費者行動としては捉えにくい、このような行動は、実力の拮抗したチームとの試合を選びたくなるというように、社会的な消費者行動として捉える必要があるかもしれません。

マーケティングの柱になる

この研究は主にマーケティングに生かされます。サッカーファンが何を求め、どう行動するのかをより明確にできれば、サッカークラブの経営強化にもつながります。それだけでなく、映画の予告編のように、何を見せ、何を見せないのかという発信の仕方はエンターテインメント業界のマーケティング強化への鍵となるのです。

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京都産業大学 経営学部 マネジメント学科 教授 涌田 龍治 先生

京都産業大学 経営学部 マネジメント学科 教授 涌田 龍治 先生

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メッセージ

スポーツ、遊園地、映画、小説などは一見、趣味や娯楽だと思われがちですが、すべてが経営、収益に関係していて、それぞれが「消費者行動論」に密接に関わっています。
経営学部では、ごく身近にある素朴な疑問から多くの人が興味・関心をもつことまで、すべてをきちんとした学問としてとらえ、比較しながら学べることが魅力だと思います。さまざまな対象があり、切り口がある学問なので、まだまだ未解明な部分もたくさんあります。ぜひ一緒に研究しましょう。

先生への質問

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京都産業大学は、文系・理系合わせて10学部18学科、約15,000名がひとつのキャンパスで学ぶ総合大学です。この一拠点総合大学の利点を活かし、実社会で活きる高度な専門知識とスキルを養うとともに、学部を超えた知の交流により総合的かつ柔軟な学びを展開しています。各分野の第一線で研究を続ける教員たちから学ぶのは、実社会で強みになる専門知識。大講義だけでなく、対話を重視した少人数クラスや実践的な演習で、次世代を担うに足る「むすんで、うみだす。」力を身に付けていきます。