純粋数学と応用数学~数学は社会とどう関係しているのか~
流体の動きを記述する偏微分方程式
流体の動きは偏微分方程式で記述することができます。偏微分方程式は複数の変数を持つ微分方程式です。流れるものはすべて流体と見なすことができます。気体や液体はもちろん、砂の流れや道路を走る車も流体です。偏微分方程式の利点は、これらのさまざまな現象を、1つの方程式で表現できることです。それぞれの状態に応じて、変数の数や数値を変えればそれが可能です。このような便利な機能があるため、工業分野でシミュレーションなどに利用されています。
自然現象と数学は違う
このように数学では異なる現象を同じものと考えることができます。これは自然現象の中から共通のパターンを見出し、それを数式化するからです。しかし、数学と自然現象は同じものではありません。自然現象にはさまざまな要素が含まれていますが、それらをすべて取り出すことはできないので、重要なものだけを抽出します。また、現象が起こる環境が異なることも自然現象の特徴です。例えば、広がった空間とパイプの中などの空間では流体の動きは異なります。
そこで、簡単なモデルを作り、そのなかで現象を表現する方程式を考えるのが数学です。工業分野で利用できる数学を応用数学と言いますが、いったん数式化されると純粋数学として発展していきます。例えば、偏微分方程式で一意的な解が存在しない場合も考えられるなど、方程式としての性質や限界が明らかになっていくのです。それが数学上の解決すべき大きな課題となります。
数学の発展が社会に役立つ
数学がすべて自然現象の解析に使えるわけではありません。数学で解がないものは自然現象の解析には使えません。モデルを作ったからといって、すべてが解析できるとは限らないのです。一方で、純粋数学の発展が社会に役立つ場合もあります。例えば抽象代数学の群論が、コンピュータの暗号化技術に生かされています。自然現象から生まれ発展した数学は、ほかの技術との融合で社会に活用される場合もあるのです。
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九州大学 共創学部 共創学科 准教授 ブレジナ ヤン 先生
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