子どもがウソをつくのはめでたい? 感情発達と言葉かけの保育研究
ウソは感情発達の表れ
発達研究の視点から見ると、乳幼児が初めてウソをついたら、それはお祝いしてもいいほどの価値があります。ウソをつく瞬間、こどものこころの中では複雑な情報処理が行われています。ウソをつくには、まず自分と他者は違う考えを持っていると理解していなければなりません。そして自分が本当に抱いている感情をコントロールし、相手の意図を操作しようと偽の感情で演じます。こうした複雑な処理ができるようになって初めて、ウソがつけるのです。
言葉がけの影響
ウソは発達の表れでもありそれ自体は喜ばしいことですが、他者を傷つけるようなウソをついたときは、大人がきちんと導く必要があります。悪いことをした、とこどもに認識させるためには、どのような言葉がけが効果的なのでしょうか? 例えばこどもが食器を割ってしまったとします。大人が「だめでしょ」と強くしかられる経験が重なると、次からこどもは怒られることを恐れて、事実を隠そうと「割ったのは私じゃない。」とウソをつくかもしれません。大人がかけるこどもへの言葉は、こどもの学習やその後の行動にも影響を与えると考えられています。大人の言葉がけが子こどもの発達に与える影響は、研究でも明らかにされつつあります。
効果的な言葉がけを探る
保育所の1日をビデオで撮影し、保育者の言葉がけとその後のこどもがとった行動観察の調査があります。3歳児のクラスの調査結果で、こどもが悪いことをしたときに「だめ」と単純に否定してもあまり効果的ではないことがわかりました。「本当にその行動をしてもいいの?」と誘導的に尋ねたり、あえて何も言わずしばらく見守ったりしたほうが、正しい行動につながることがわかりました。頭ごなしに注意するよりも、こどもが自分の行動を振り返えられるような言葉がけや、気づきにつながる見守りが効果的だと考えられます。さらに研究が進んで、こどもの発達にふさわしい言葉がけが明らかになれば、保育現場で役立つだけではなく、こどものよりよい育ちや未来につながると期待されています。
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東京未来大学 こども心理学部 こども心理学科 講師 川口 めぐみ 先生
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