林業・水源・国土を守る「森林計画」の研究
森林の利用・管理計画が重要な理由
「ザ・自然」というイメージがある森林ですが、実は全く人間の手が加わっていない森林はほとんどありません。木を伐って売ったり、植林や間伐をしたりと、人間が利用・管理してきた歴史が森林を作っています。
日本は国土の約3分の2が森林で、世界でも森林の割合が高い国です。森林には、土砂崩れを防ぐ、雨水を浸透させて水源になるなど、公益的で重要な役割があるので、木材生産の利益だけを考えるわけにはいきません。また、木が育つには何十年もかかります。そのため、「森林経理学」「森林計画学」という学問として、林業の採算や国土保全、水源確保などの観点から、長期的かつ包括的に計画する研究が重要です。
利益を生むまで何十年もかかる産業
建材に適したスギやヒノキを植林した森林が多いのですが、木が商品として売れるまで数十年かかります。しかし、間伐、枝打ちなどのコストは先に必要で、そこが林業の難しいところです。
そのため、木材需要や木の成長の予測や、最新の器機によるコスト削減なども見据えて、今伐採するべきか、それとも高値で売れるまであと数十年育てるべきかなど、林業経営がうまくいくための試算や分析が重要です。最近では木質バイオマス発電が増え、今まで捨てられることの多かった間伐材なども燃料として需要が高まるといった時代の変化もあり、こうした新しい要素も試算に加えています。
森林政策にも影響する
森林には公的な役割があるため、林業には補助金が支給されたりします。こうした公的制度のあり方を考えることも重要です。例えば、補助額が変わったら林業にどう影響し、その結果、森林の状態がどう変わるかといった科学的な根拠を基に、政策を検討することも重要です。森林の役割を維持し、かつ林業経営もうまくいくための様々な工夫も研究されています。
二酸化炭素を吸収する森林の機能も特に注目されており、その価値を評価する研究も進んでいます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。