廃棄物からエネルギーを! 〜メタン発酵とは?〜
下水汚泥からのエネルギー回収
私たちが日々の暮らしを営む中で、必ず発生するのが生活排水です。
代表的な生活排水処理施設の下水処理場では、処理の過程で下水汚泥と呼ばれる有機性廃棄物が発生します。この下水汚泥を微生物によって分解させると、メタンを含むバイオガスが発生します。この処理方法をメタン発酵といいます。発生するバイオガス中に含まれるメタンは、可燃性であり、燃焼させることで発電や熱利用が可能です。もともとは下水汚泥の発生量を低減させるための処理方式でしたが、同時にエネルギーを回収することが可能であり、様々な有機性廃棄物も一緒に処理できることから、近年再注目されている処理方式です。
下水汚泥の肥料利用
下水汚泥には、窒素、リン、カリウムが含まれており、肥料として利用することが可能です。メタン発酵後の下水汚泥は性状も比較的安定しており、脱水・乾燥・造粒して肥料としての利用が期待されます。また地域によっては液肥として利用することもできるかもしれません。しかし、下水汚泥肥料の利用はそのイメージもあり、思ったようには進んでいません。下水汚泥肥料がもっと農業で利用されるためには、品質の向上やイメージの払拭に加えて、農業者が求める性能の提示も必要なのではないかと考えられます。
メタン発酵による地域内資源循環・エネルギー循環
下水処理場に生ゴミなど地域で発生する様々な有機性廃棄物(地域バイオマス)を集約し、下水汚泥と一緒にメタン発酵処理をすれば、下水処理場がエネルギー創出拠点になります。そこで発生した残渣には地域バイオマス由来の窒素、リン、カリウムが多く含まれ、良質な肥料となります。これにより、下水処理場が肥料製造工場となります。そこで作られた電気や肥料を地域で利用する仕組みをつくれば、「下水処理場」から「地域のための発電所、肥料工場」に人々の認識が変わります。こうなれば、地域にとって必要不可欠な施設となり、まさに持続可能な廃棄物処理、下水処理につながるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
公立鳥取環境大学 環境学部 環境学科 准教授 戸苅 丈仁 先生
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