「金属疲労試験」に、物理や数学の知識が必要な理由
「金属疲労試験」はなぜ必要か
機械には金属材料が多く用いられています。機械が動くと金属材料に力が加わり、それを繰り返すなかで金属は疲労して最悪破断します。そこで疲労破壊しない信頼性ある製品を作るために、材料の疲労試験が行われます。試験では使用される金属材料を検査機器に取り付けて、強度や耐久性などを計測して材料特性を分析します。さらに得られたデータをもとに、コンピュータを用いてシミュレーションテストも行います。そして最後に実際に製品を製造して強度試験を行い、製品が安全に使用できるかを確認します。
疲労試験による疲労特性の解明
疲労試験で行われるのは、引張-圧縮、ねじり、曲げのテストです。例えば、引張-圧縮のテストは、引張力と圧縮力を繰り返し加えながら、どの程度の力や回数で破断するかで、材料の疲労に対する特性がわかります。
また、試験片に微小な穴を開け、疲労き裂がどのように進展するかを調べるテストもあります。実際の材料には肉眼では確認できないような欠陥(微小欠陥)が存在する場合があり、このような微小な欠陥でも疲労強度を大きく低下させることが知られています。微小な穴からの疲労き裂の進展の観察は、金属疲労に関する基礎データを提供してくれます。
コンピュータは道具、知識とスキルが必要
シミュレーションでは、複雑な製品の形状をコンピュータ上に再現して、試験で得られた基礎データを入力します。すると、各部分の強度や耐久性が自動的に得られます。シミュレーションのメリットは、実際にモノを作らずにコンピュータ上で試験ができることです。よって短時間、低コストで製品開発ができます。また、さまざまな形状を試すことができます。
しかし、この作業には、プログラム作成など事前の準備と、シミュレーション結果の評価が必要です。「材料力学」の知識や「微分積分」など数学の知識がなければ、シミュレーションはできません。コンピュータはあくまで計算道具なので、それをうまく使いこなすための工学的知識やセンス、スキルが求められるのです。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 工学部 機械工学科 教授 柳瀬 圭児 先生
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