笑顔を作れば気分が高揚し、スポーツ能力も高まる
身体化認知をスポーツに活用
スポーツにおいて、心と体にはどういう関係があるのでしょうか。この課題を考える上でヒントとなるのが、「身体化認知」という考え方です。この理論では、例えば冷たいコーヒーよりも温かいコーヒーを持った後のほうが、対面した相手を温かい人だと判断することが検証されています。つまり人間は、視覚等から得られる情報のほかに、身体から得られる情報で物事を判断するということです。これは、身体の動きを意識的に変えれば、ポジティブな気持ちになり、ひいてはパフォーマンスが向上することを示唆しています。
身体の動きで心と行動を変える
例えば野球において、バッターが自信ありげなビクトリーポーズを2分間とると、しない場合に比べてピッチャーの球種やコースを予測する精度が上がることがわかっています。また、自分の顔がスクリーンに映る自転車エルゴメーターで運動を行う際に、一定の時間帯で意識的に笑顔を作るようにすると、そうしない場合に比べて、運動後の爽快感が高まります。
さらに言えば、笑顔は伝染します。表情が豊かになることで、相手の気持ちを読み取りやすくなります。チーム競技ではお互いのコミュニケーションがよくなり、人間関係が深まることが明らかになっています。これらのことは、スポーツに限らず、職場でのプレゼンテーションや日常生活の人間関係などにおいても応用可能です。
スポーツ能力の向上で重要な心と体の知見
このような心と体の知見は、試合のような重要な場面だけでなく普段のトレーニング場面でも、単調な練習での意欲低下を防ぐことができます。重要なのは、心と体の関係に気づき、体をいかに動かすかを考え、それを繰り返すことで体得して、自然にそれができるような状態にすることです。人間の心理や行動は環境との相互関係で決まります。それを自らコントロールできる能力を身につけることは、パフォーマンス向上のためには欠かせない要素なのです。
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福岡大学 スポーツ科学部 教授 山口 幸生 先生
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