生体試料からさまざまな病気の原因物質を分析する方法とは?
生体試料を分析する!?
医療診断を正しく行うためには、患者さんの体内の正確な分析データが不可欠です。そのため、血液や唾液などの生体試料から、病因となる物質を分離・検出し、その量を計測する技術が確立されています。この技術は、いくつかのプロセスから構成されます。まず、血液などの生体試料には、目的成分の分析を妨害し得る雑多な成分が含まれているため、あらかじめ「前処理」と呼ばれる方法でそれらを取り除きます。次に、目的成分がもつ物理化学的特性を利用して精密に「分離」し、最後に目的成分の存在や量をはっきりと確認するための「検出」を行います。
目的とする生体成分を「みつける」ための方法
目的成分を「みつける」ための分離や検出法はさまざまです。基本的には、目的成分自身がもつ性質を利用します。例えば、水と油は混ざりあうことはありません。ここに試料が入ると、水に溶ける物質は水の層に、油に溶ける物質は油の層に移行します。つまり、水や油への溶けやすさの違いによって分離が達成されるのです。そのほか、イオン性物質の帯電の差を利用したり、分子量の大きさで分離したりする方法などがあります。また、分離された成分を検出するには、目的成分の吸光・発光する性質や、その質量(分子量)そのものを計測する方法などを利用します。これら分離法と検出法を適切に組み合わせ、生体試料から目的とする成分を「みつける」のです。
進化する分析方法
このような試料を分離・検出する方法は、クロマトグラフィーと呼ばれ、日々進化しています。例えば、水と油の性質だけで分離する方法では不十分な場合がありますので、あらかじめターゲットとする物質を決め、その物質とのみ反応したり、あるいは親和性を示したりする物質を利用する方法なども考案されています。最近では、さまざまな分離法と検出法を組み合わせて、生体成分を網羅的に分析し、どういった成分がどんな病気と関わり、あるいは関わっていないかを突き止めることで、病気に対する新たな診断方法を見出す研究も行われています。
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福岡大学 薬学部 薬学科 准教授 巴山 忠 先生
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