見えない空気を可視化 衝撃波の分析で機体の改良点を探る
見えなくても存在する空気の流れ
火のついたロウソクを複数本並べると、炎が揺れるリズムが徐々にそろう共振反応が起こります。このとき空気は目に見えませんが、数学の計算や画像解析によって可視化できます。例えば「背景指向シュリーレン法(BOS法)」では、温度ごとの空気の密度や光の屈折がわかる特殊なカメラを用いて、かげろうのように揺らめいた景色を撮影できます。これで、共振するロウソク上部の空気が大きくゆがんだ光景が見えるようになります。さらにロウソクに火をつける前後の画像でゆがみの度合いを比較すると、空気の流れや温度などがわかります。
衝撃波を可視化する意義
空気が音速を超えたときに生じる衝撃波も目に見えませんが、BOS法などで可視化することができます。可視化によって、爆発が起きたときの衝撃波の範囲やエネルギーの大きさがわかれば、頑丈な建物の構造や衝撃波を打ち消す方法を考えられます。
衝撃波の観測は宇宙開発にも欠かせません。例えば小惑星探査機「はやぶさ」のカプセルが地球に高速で落下するとき、表面は高温になります。カプセルが燃え尽きないよう、空気の流れを予測して温度や負荷に耐えられる構造にするのです。
プラモデルで空気を観測
航空輸送の高速化のためにも空気の可視化が必要です。空気の流れを計測すれば乗員に影響が出ない機体の形状、衝撃波を打ち消すときに最適な羽根の角度などを考えられます。しかし毎回実機で計測することは難しいので、プラモデルも活用します。人工的に空気の流れを生み出せる風洞という機械に飛行機のプラモデルを固定して衝撃波を当てると、超音速飛行を疑似的に観測できます。このように空気を可視化することで現在検討中の超音速旅客機の実現など、さまざまな産業への貢献に繋がるのです。
また、流体のエネルギーによって推力を生み出すドローンの開発にもつながってきます。安定して飛行できる機体が開発されることで、将来、防災などに役立つといわれています。
参考資料
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湘南工科大学 工学部 機械工学科 准教授 稲毛 達朗 先生
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