「ここの空気はおいしい!」を、リスクの視点から考えてみよう
「空気の質」を意識する
ニュースなどでディーゼル排気粒子やPM2.5の問題が取り上げられているのを、聞いたことがあると思います。これらは大気中に浮かんでいる、肉眼では見えにくい固体の物質で、健康への影響が懸念されていることから、超えてはいけない基準となる値が定められています。このように五感で認識しづらい空気の質は、日頃の生活の中ではなかなか意識されず、これらをどれくらい浴びると(ばく露評価)、どれだけ有害か(影響評価)という2つの観点から、好ましくないことが起こる可能性を数値化(リスク評価)し、政策に生かしていきます。
体の中に入ってからの運命も大切な要素
ばく露評価では、どのような物質が、どのような経路で、どれだけ体内に入るかなどを、実測したり客観的なデータをもとにして算出したりします。体の中に入った後の分布や、体外に排出されるまでの速度なども大切な要素で、ダイオキシンのような油と仲のよい物は脂肪に長く蓄積し、アスベストのようにとがった物は、ある領域で留まったままとなり、これらの物としての特性が健康影響にも密接に関わっています。
コミュニケーションを通じた判断
ばく露評価と影響評価の両輪によって導き出されたリスク評価値を参考にして、集団としての健康を守るための制度や仕組みを、行政や政治が政策として進めていきます。このような過程では、「安全か危険か」、「黒か白か」についての答えが求められがちですが、衛生工学やリスク工学の役割は、白黒をつけるのではなく、グレーを数値として示していくところにあります。
行政が基準を設ける方法に対して、近年では個々の判断にも重きを置いた、コミュニケーション(リスクコミュニケーション)も重視されはじめています。遺伝子組み換え食物のような、影響を客観的に数値化しにくい事象については、個々の判断も大切になってきます。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 工学部 地球工学科 環境工学コース 教授 松井 康人 先生
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