目に見えない大気エアロゾル粒子が地球環境を左右する

目に見えない大気エアロゾル粒子が地球環境を左右する

大気エアロゾルとは?

大気中にはさまざまな物質の微粒子が漂っています。黄砂などの鉱物粒子、ウィルスや細菌、車や工場から排出される気体が粒子化したものなどです。こうした粒子が含まれる大気のことを「大気エアロゾル」といいます。発生源が異なる粒子が混じり合い、姿かたちを変えながら、大気中に浮かび、運ばれていきます。
大気エアロゾルは、人間の健康や環境に影響することがわかっています。どのような仕組みでどれくらい人体や環境に作用するのかは、粒子のサイズや形、量といった物理的性質や化学組成によって異なります。

研究の強力なツール、電子顕微鏡

大気エアロゾル研究にはさまざまな手法が用いられますが、その一つが、電子顕微鏡で一個一個の粒子を観察、分析するというものです。大気エアロゾルの粒子はとても小さいため、普通の顕微鏡ではあまりよく見えません。分解能の高い電子顕微鏡を用いることで、粒子の微細な形や構造、大きさを知るとともに、部分的な化学組成を知ることもできます。こうして、どのような物質がどのような形で存在し、どのように混じり合って反応したのかがわかるのです。例えば、黄砂の鉱物粒子を硫酸塩や硝酸塩が包み込んでいる様子が見られ、黄砂が砂漠から運ばれる間に、大気汚染物質と反応していることが明らかになりました。そうした研究成果が積み重なって、大気中で起こるさまざまな現象の解明が進められています。

大気エアロゾルと病気の関連性

現在行われている大気エアロゾル研究の一つが、乳幼児がかかる「川崎病」と大気エアロゾルとの関連を調べるものです。川崎病の原因はいまだに不明ですが、大気中の微生物や汚染物質が関係するという仮説が、大気エアロゾルの分析によって検証されています。また、心筋梗塞と大気エアロゾルとの関連も見出されており、医療や環境の専門家と大気エアロゾルの研究者が協力して、発症の仕組みを解明しようと研究が進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

熊本大学 理学部 理学科 准教授 小島 知子 先生

熊本大学 理学部 理学科 准教授 小島 知子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

大気環境学

メッセージ

進路を考える時、将来のゴールを設定してそこへの最短距離を進もうとしがちですが、私はもっと寄り道をすることをお勧めします。「何の役に立つか」ではなく、その時に面白いと思うことをやるのです。テスト勉強は答えがわかっていることを学ぶことですが、この世界には答えのわからないことが無数にあります。好奇心をきっかけに研究して自分で答えを見つける喜びを知ってほしいです。人生にはうまくいかないこともありますが、その時々で面白いことをしていけば、納得のいく人生が送れるはずです。

熊本大学に関心を持ったあなたは

熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。