レジリエンス社会に向けた、災害の爪痕を光って知らせる技術
物体に力が加わったときの現象の解析
土木工学の中に「弾性学」という領域があります。物体に外から力が加わったときに、ゆがんだり、壊れたりと、いろいろな現象が起きますが、それを数学的に解析してメカニズムを明らかにしていく学問です。
私たちの社会は、鉄鋼やコンクリートなどの、さまざまな素材でできた建物や橋などの建造物を利用しています。災害で建造物に大きな力が加わったときに壊れないようにする、または壊れてもすぐに復旧できるよう、「レジリエンス(回復力)」のある社会にするために、弾性学は重要な役割を果たしています。
応力発光、破壊発光の原理を応用
昔から、大きな地震が来る前に、地面や岩の裂け目が光る現象があると言われてきました。身近なところでは、張り合わせた布テープを暗闇で勢いよく剥がすと、光が見えることがあります。このように外部から力が加わることで光を出す「応力発光」「破壊発光」という物理現象があります。こうした現象を応用して、建造物の損傷を点検できる材料が開発されています。ある特殊な粉体をエポキシ樹脂と混ぜて建造物に塗ると、力が集中している部分が発光して、損傷個所が発見できるというものです。この材料の実用化に向けて、弾性学の基礎理論をもとにそのメカニズムを研究しています。
レジリエンスのある社会に向けて
近年大規模化している台風が発生すると、広範囲にわたる構造物が同時多発的に異常な力に曝されることになります。そのような構造物に対して、災害後に短時間で健全性を把握することは都市機能を維持するうえで重要な課題となっています。しかし、被災直後に一挙に把握することは困難であり、迅速かつ簡易的に損傷の程度を測定でき、災害復旧を速やかに行える技術が求められています。損傷を探る技術はいくつかありますが、塗料を塗るだけという簡易な方法で、例えば台風の最中にリアルタイムに光を見て損傷を発見できるようになります。レジリエンスのある社会に向けて、この技術には企業や行政から注目が集まっています。
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先生情報 / 大学情報
前橋工科大学 工学部 建築・都市・環境工学群 准教授 宮川 睦巳 先生
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