替えうたにも意味がある! 音楽の授業をよりよくするには?
授業の作り手は教師だけではない
授業とは何でしょう。授業をするのは誰でしょう。どんな授業が望ましいでしょう。日本の学校では1980年代以降、徐々に、授業とは教師だけでなく子どもたちも共同で作るものだと考えられるようになりました。教師が教えたことを習得するだけではなく、一緒に学ぶ子ども同士のコミュニケーションも、授業の大切な要素だと考えられます。
暗い曲を聴いた子どもの反応は?
小学校の音楽の授業を観察した調査では、暗い雰囲気の短調のピアノ曲を聴いた子どもたちが、「お葬式の曲!」と騒ぎ出した事例があります。もしこれを私語だとして教師が注意して黙らせてしまうと、子どもたちの気づきを深掘りする機会が失われてしまいます。この調査で先生は、「怖かった?」と問い返し、だんだんテンポを上げながら同じ曲をくり返し弾きました。その結果、子どもたちは、「短調は暗く聴こえる」「テンポが速くなると怖くない」など、音楽の要素とそのはたらきについて自然と理解を深めていったのです。
替えうたから見える子どもの姿
授業中に子どもたちが即興で作る替えうたにも音楽学習上の意義があると考えられます。子どもたちは自分にとって親しみの持ちにくい教材曲に、自分の感情や思いつきをのせて替えうたにします。不謹慎で下品な言葉を入れ込み、密かに流行らせることもあります。教科書に即して教師が展開する授業に対して、ゆるやかな「抵抗」「逸脱」をするのです。子どもたちは単なる授業の受け手ではなく、ときには権力関係を転覆させようと企む存在でもあるのです。
こうした子どもたちの反応をむやみに押さえつけず、全員が主役になって参加できる授業を展開できれば、学習内容への理解がより深まるかもしれません。学校現場で働く教師たちを支える知見を得るためにも、さらなる研究が求められています。
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埼玉大学 教育学部 学校教育教員養成課程 准教授 森 薫 先生
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