講義No.08533 経済学

自分の利益を他人に分け与えるのは、実は自分のため?

自分の利益を他人に分け与えるのは、実は自分のため?

現実は理論通りにはならない?

経済学の理論を実際に人間で試す研究があります。これを「実験経済学」と言います。経済学の理論は、現実世界を単純化した条件のもとで組み立てられることが一般的です。経済学の理論において、人間は自分の利益の最大化を合理的に追求する存在だと想定されています。しかし、複雑な現実世界においては、人間がその理論通りに行動しないことも珍しくありません。

人間の複雑な心理

例えば、2人の人間をペアにして、片方にだけお金を与えるとします。そして、お金をもらった人は、お金をもらっていない人に、自分のお金を分け与えることができるとします。この場合、経済学の理論では、お金をもらった人は、「自分の利益を最大化するために、相手にお金をまったく分け与えない」と考えます。
しかし、実際にこれを人間で実験すると、相手にお金を分け与えるケースがよく見られます。そこには「相手の期待に応えたい」など、理論に組み込むのが難しい人間の複雑な心理が関係しているからです。実験の結果は、相手と対面しているかどうかや、相手の性別・年齢などの条件によっても変わってきます。

人間は合理的な生き物ではない?

この実験における実際の人間の行動は、必ずしも合理的でなかったわけではありません。自分の利益を少なくしてまで相手にお金を与えるという選択は、複雑な現実世界においては、時として合理的な判断でもあるのです。
例えば、この実験の相手が友人なら、あなたも相手にお金を与えないという行動を選ばないでしょう。そして、その選択の背景には、今現在の利益よりも、その後の人生を踏まえた利益(友人関係の維持など)を最大化するための合理的な計算が働いているはずです。
このように人間は、一見すると他人に利益をもたらす利他的な行動をしているようでも、実はトータルで見ると自分の利益を最大化できるよう、合理的に行動しているケースもあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

亜細亜大学 経済学部 経済学科 准教授 加藤 一彦 先生

亜細亜大学 経済学部 経済学科 准教授 加藤 一彦 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経済学、実験経済学、ゲーム理論

先生が目指すSDGs

メッセージ

「経済学」を学ぶなら、数学ができるに越したことはないですが、大学に進学してからがんばって勉強しても十分間に合います。それよりも、あなたが日常生活で、何となく「おにぎりを買ったり」「バスに乗ったり」した時に、ちょっと立ち止まって、自分がなぜその行動を選んだのかを考えてみてください。
あなたは、たくさんの選択肢の中から、いろいろな価値を比べた結果、その行動を選んだはずです。経済学では、そうした人間の選択行動を研究します。自分の選択について考える習慣がつくと、経済学を楽しく学べます。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

亜細亜大学に関心を持ったあなたは

亜細亜大学では「多様な夢に挑み、アジアの未来に飛躍する創造的人材」の育成をめざし、5学部8学科の学士課程教育、国際教育、キャリア教育と軸とした教育体制を整えています。
さらに2023年4月にデータサイエンスと経営学をつなぐ画期的な学びを提供する「経営学部データサイエンス学科」を開設。初年次教育やゼミナールの必修化、留学制度、副専攻制度など、学生一人ひとりの興味・関心に合わせて、柔軟で広い視野を獲得するための多彩な学びを実現するカリキュラムを構成しています。