自動車の自動運転技術の鍵を握る、「ソフトウェア」開発の現在

自動車の自動運転技術の鍵を握る、「ソフトウェア」開発の現在

自動運転の定義

世界中の企業や研究者がしのぎを削って研究開発を進めている自動車の自動運転技術は、5段階のレベルで定義されています。操舵、加速、制動のどれも人間が行うレベル0にはじまり、人間が全く関与しない完全な自動運転がレベル4です。
レベル4において、人間がしていることをコンピュータが行うためには、車の周囲の状況や情報をカメラやセンサで収集する「認知」、集めた情報を地図や交通ルールなどと照合して車をどう動かすかを決める「判断」、実際に車の操舵や加速、制動を最適な形で作動させる「操作」といった複数の領域を横断的に考える必要があります。

日本で開発された「Autoware」

「認知」「判断」「操作」の各領域の研究は、それぞれ非常に細分化されています。鍵を握るのは、それら複数の機能を束ねて実装するための「ソフトウェア」です。日本で共同開発されたソフトウェア「Autoware」は、公道で本格的に利用可能な性能を持っており、これさえあれば画像の認識、現在位置の推定、経路の計画、車両の制御ができてしまいます。
Autowareでの自動運転には、高精度の3次元地図が必要です。ただ日本においては、以前から国土の高精度の測量が行われ、デジタルデータ化されていますから、この測量データを流用することで、道路や地上設備に何の手も加えることなく、自動運転が可能となるのです。

レベル4がもたらす未来

Autowareはオープンソースとして公開されています。つまり世界中の研究者や企業は、このソフトウェアを自由に使い、それぞれの専門や得意分野に特化した自動運転技術の研究開発ができます。例えばカメラで周囲の状況を「認知」する際の、暗闇や逆光下での精度を上げるといった個別の課題の解決に専念できるというわけです。
レベル4の実現には、技術面だけでなく社会制度などの整備も必要ですが、そう遠くない将来、行き先を指示するだけでどこにでも行ける自動車の登場が期待されています。

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東京大学 理学部 情報科学科 准教授 加藤 真平 先生

東京大学 理学部 情報科学科 准教授 加藤 真平 先生

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情報科学、情報工学

メッセージ

高校生の頃から、自分が将来どうなるのかを想像することは、難しい面があると思います。なぜ今、数学を勉強しなければならないのか、なかなか理解できないでしょう。だからこそ高校や大学では、勉強でも、部活でも、何でもいいですから、目の前のことを、未練を残さないようにやりきってください。
何に対しても中途半端にしかしていないと、中途半端なことしかできない大人になります。学生時代にやりたいことを未練を残さずにやりきった人は、大人になってもやりたいことをできる素養がついていると思います。

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