あなたの個人情報が守られているのは、「素数」のおかげ!?
「暗号」は現代社会に不可欠な技術
「暗号」と聞くと、スパイ映画や推理小説に出てくるような非日常的なものを想像するかもしれません。しかし、一般にやり取りする情報を第三者が理解できないようにする技術のことを暗号と言いますが、現代社会において、暗号はとても身近なものであり、日常生活を支える重要な技術として使われています。例えば、電子マネーやインターネットでの買い物などは、入力した個人情報が暗号化されて送られることで守られているからこそ、安全に利用できているのです。
素数の特性を利用した「RSA暗号」とは
代表的な暗号技術に「RSA暗号」というものがあります。このRSA暗号には、素数の特性が利用されています。ともに素数であるp、qを掛け算して合成数nを求める計算は、たとえp、qの数が大きくなっても、コンピュータを使えば高速でできます。しかし、反対にnを素因数分解してpとqを求める計算は、nの数が大きくなればなるほど、コンピュータを使っても困難になります。
この素数の特性を暗号に応用すれば、p、qを知っている者には復号できますが、それを知らない第三者には解読できない強力な暗号が作れるようになるのです。ちなみに、2の1000乗ほどの大きさの素数を掛け合わせた合成数を暗号に使用すれば、高速な計算機を用いても素因数分解に天文学的な時間を要するため、事実上解読は不可能になると考えられています。
現代暗号を支える数理科学
現在、情報セキュリティの世界で使われている暗号の安全性は、素因数分解問題などの整数論的な問題の計算困難さによって支えられています。ほかにも、楕円曲線暗号と呼ばれる代数曲線上の離散対数問題と呼ばれる問題の計算困難さに基づく暗号方式なども提案されており、さまざまな数理科学の問題が暗号に利用されています。このように、長い歴史を持つ数理科学の研究が現代暗号を支えているのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 数理科学科 教授 内山 成憲 先生
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