講義No.03257 教育 数学

算数の授業で子どもたちの考える力を育てるには?

算数の授業で子どもたちの考える力を育てるには?

答えを教えるだけでは考える力は育たない

小学校の算数の授業で問題を出すと「先生、早く答えを教えて」と言う子どもと、「じっくり考えるのが楽しいから、答えは言わないで」と言う子どもがいます。前者は考える時間は無駄で、先生が答えを知っているのだから教えてもらうのが一番いいと思っているのです。算数が正確さや速さを競うだけのものならば、それでいいのかもしれません。しかし、それでは「習っていないものは、できない」ということになってしまいます。「考える」とは、まだ習っていないことを自分がこれまで得た能力を使って試行錯誤しながら解決しようとすることです。言われたことはするけれど、言われたこと以外はしない子どもが増えています。自分で考えることを身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。

考えさせるための発問の工夫

考えるという行為を子どもたちの中に呼び起こすには、問いかけの仕方が大切です。
例えば「1/2+1/3」という分数の足し算の解き方を習っていない子どもに対して、単に「分母を揃えてから計算をする」と教えるのではなく、既習の内容を振り返るような問いかけをしていけばいいのです。「これまで似た問題はなかったか」と問うことで、既習の中から探すという行為につながります。そこから「分母が同じ足し算はやったことがある」「分母が違うからこの計算はこのままではできない」という考えに至り「分母を揃えればいい」という結論に達するのです。

間違えることも大事

同じ問題でも「何が何だか全くわからない」と「ここがわからない」では雲泥の差があります。どこに目をつけたかというのは考える上での大きなポイントになるのです。わからないからすぐポイと捨ててしまうのではなく、何がおかしいのかを見つめ直し、たたき台として生かそうとすることが良い試行錯誤となり、考える力が養われていきます。「わかる」というのは「そうであるもの」と「そうでないもの」の境界が見えることで初めて成り立つものです。間違えるからこそ、正しい答えへの理解が深まるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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横浜国立大学 教育学部 学校教員養成課程 教授 池田 敏和 先生

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メッセージ

算数・数学の指導では、「速く、正確に」に固執することなく、じっくりと考える力に目を向けていく必要があります。それは、試行錯誤を通して解決策が見出される過程を大切にしていくことです。思考には試行錯誤はつきものですし、試行錯誤を通して成功した経験があれば、次回はそう簡単にあきらめない子になります。そして、子どもの試行錯誤を成功へとつなげていくためには、子どもなりの論理を深く考察していくことです。子どもの考えが正しいか間違いに関係なく、「なるほど、こう考えたのか」と感銘できる心を身につけたいものです。

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横浜国立大学は、高い国際性と実践的な学問を尊重し、社会に開かれた大学をめざします。全学部の学生がひとつのキャンパスで学び、学部の垣根を越えた交流ができ、国立大学には数少ない経営学部も置かれています。新しい潮流を起こして21世紀の人類社会に貢献できるよう、社会からの要請を的確に把握し、国民から委ねられた資源を有効に活用しつつその活動を開放し、社会の期待に応えます。