数値を使って人の気持ちや行動を読み解いていく
人の気持ちや行動を数値で表す難しさ
経済学では数学を活用し、数式から導き出した値を分析などします。この結果は、政策の決定などにも影響を与えていますが、必ずしも分析した通りに物事が進むわけではありません。企業など組織の動きならある程度コントロールは可能ですが、感情があり、置かれた環境も違う人や家族は、導き出されたマス(多数)の解からあふれてしまうことが多いのです。
「労働経済学」では、社会学や心理学などで扱われる人や家族についても分析されています。経済学の特徴でもあるように、一人の人や家族だけでなく、企業の行動や国の政策など社会全体も合わせて考えます。女性研究者の数も増えたことで、より多角的な視点から課題に迫る動きが見えてきています。
政策立案には確かなエビデンスが必要
消費や教育、労働、貧困など、人と家族に関わるテーマは無数にあります。それらの中にある課題を解決していくために政策が作られますが、その背景には的確なデータ分析の結果というエビデンス(証拠)があることが必要です。例えば貧困については、今後の日本では何が原因で、どんなふうに貧しさが広がっていくのかを追ったエビデンスがあり、それが政策立案の際に参考にされるのです。
エビデンスを形作るときには国内外の既存データが多用されますが、一方で自ら現場に赴き、実地調査でデータを得ることを重視する研究者も存在します。この場合、調査だけでなく「観察」も行え、従来の経済学ではデータとして捉えにくかった「感情」にも触れることができるのがメリットと言えるでしょう。
今後もさらに広がる経済学のフィールド
政策は人の「困りごと」を解決するために存在します。困っている人、集団の声を聞くことは大きな意味を持ってくるはずです。労働経済学では、「声を拾う」手法も使いながら、今後は人のメンタルや、私たちの中に根付いてしまっている、時代とそぐわない規範や慣習が何によって変えられていくか、そのときにはどんな政策が必要になるかが追究されていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 法学部 国際公共政策学科 教授 小原 美紀 先生
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労働経済学先生への質問
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