いろいろな「美味しい」に応えるムギの品種改良

いろいろな「美味しい」に応えるムギの品種改良

私たちに身近な食材「小麦」

小麦は、パン、うどん、パスタなどの原材料で、私たちには身近な食材です。日本の小麦の自給率は10%余りで、あとは、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどから輸入しています。小麦の粒は、何層もの薄皮で硬く包まれており、主に胚乳の部分を粉にして食用とします。小麦の胚乳部分は、デンプン67~75%、タンパク質6~14%、脂質1~2%、ビタミン・ミネラル1%未満という構成です。

用途によって、使い分ける

小麦は、粉にすると白く、一見同じに見えますが、小麦の種類によって主にデンプンとタンパク質の種類や量が違います。それらの違いに基づく小麦の種類は、大きく分けて、パンに向く硬質小麦、うどんに向く中間質小麦、お菓子に向く軟質小麦、パスタに向くデュラム小麦があります。製粉会社が小麦を粉にしてからブレンドし、タンパク質の含有量によって、少ない順に薄力粉、中力粉、強力粉と区別し、製品にします。
小麦は、農耕が始まった頃から人間が食べていたという、長い歴史がある植物なので、品種改良が盛んに行われてきました。これまでは育てやすく、多く収穫できる小麦の研究が進められていましたが、最近では品質にこだわる傾向も強くなってきました。

「小麦の親戚」の遺伝子を見つける

小麦の研究は確かに進んでいますが、まだまだ改良の余地が残されています。例えば、パンの生地を作る際、国産小麦では、とても弾力の強いもの、逆に弱すぎるものがありますが、中間のちょうどよいものが少ないのです。パンに限らず、消費者の好みは多様化しているので、その好みに対応した小麦をそろえておきたいものです。
新しい種類の小麦を作るためには、改良したい遺伝子を持つものとの交配を行います。そのめざすものによっては、交配の対象を野生種にまで広げて探す必要があります。空地などに自生しているイネ科の雑草カモジグサなど、新たに小麦の親戚である野生種を探る研究も進んでいます。意外なところに、新たな小麦の「種」が見つかる可能性が広がっているのです。

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先生情報 / 大学情報

鳥取大学 農学部 生命環境農学科 植物菌類生産科学コース 准教授 田中 裕之 先生

鳥取大学 農学部 生命環境農学科 植物菌類生産科学コース 准教授 田中 裕之 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

農学、植物遺伝学、植物育種学

先生が目指すSDGs

メッセージ

まずはなんにでも興味を持って、挑戦してください。よい考えが浮かんでも、「失敗するから、やらない」「簡単にできそうだから、今はやるまでもない」などと決めつけてしまう人がいます。実際にやってみると、すごい発見をする可能性があるのに、もったいないことです。
もちろん、よい考えに加えて、基礎学力は必要です。基礎学力がないと、チャンスに巡り合っても、見逃してしまうことがあります。また遊び心も必要で、役立つかどうかわからなくても、面白そうだからとやってみると、意外にそこから新たな広がりがあるものです。

先生への質問

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