環境にやさしい「天敵」を使った害虫防除
害虫防除に天敵を活用する方法がある
農作物に被害を与える害虫を防除するために、天敵を利用する方法があります。天敵を田畑に放して、害虫を捕食してもらおうというものです。といっても、天敵なら何でもよいというわけではありません。天敵には「スペシャリスト」と「ゼネラリスト」がいます。スペシャリストとは、特定の虫だけを食べる天敵です。一方、ゼネラリストは複数の種類の虫を捕食します。
外来種の害虫ならスペシャリストで対応!
害虫防除に向いているのはスペシャリストです。このタイプは、餌となる虫の匂いを嗅ぎ分けることに優れているとか、捕まえるのに適した形態をしているといったスペシャリストなりの特徴があります。そのため苦労なく捕食します。外来種の害虫を防除するときにはスペシャリストに限ります。外来種を攻撃するスペシャリストであれば、すでに増えてしまった外来害虫だけを見つけ出し、その害虫の数を効果的に減らしてくれます。そして害虫が少なくなると自らも減り、お互い少ないところで数が安定します。
一方、土着の害虫の場合は、すでにいる天敵を増やすことで対応しますが、逃げてしまったりしてなかなかうまくいかないときがあります。ハウスなど閉鎖空間であれば効果的に利用できます。
天敵による害虫防除のメリットとは
ゼネラリストの場合は害虫だけを食べるわけではありません。しかも、スペシャリストのように特定の餌を食べるのに優れていないので、害虫防除の効率は悪くなります。また、人間にとって有益な虫を食べたり、農作物を食べたりすることもあります。天敵がスペシャリストかゼネラリストかを見極めることは大変重要なのです。
天敵による害虫防除は、農薬に比べて安価であることも多く、環境汚染や健康被害の心配がありません。ただし、農薬のように常に効果があるとは限りません。また害虫を根絶するわけではないので、害虫の食べ跡が農作物に残ることもあります。天敵による害虫防除では、生産者と消費者にそれを許せる寛容さが求められるのです。
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先生情報 / 大学情報
九州大学 農学部 生物資源環境学科 生物資源生産科学コース 准教授 上野 高敏 先生
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