国境を越える人々〜現代版「人身売買」を考える~
大きな影響を生む「人の国際移動」
多くの人は生涯を生まれた国で過ごしますが、他国に移動・移住する例も増えています。特に現代は「グローバリゼーションの時代」と言われ、文化もビジネスも、かつてないほどのスピードで国境を越え、人の国際移動も活発です。
人間が国境を越えることによって、人々の交流が促進され、相互理解が深まります。しかし、一方で人種・民族、文化や宗教観の違いが、新たな差別や迫害を生むこともあります。移動した当事者だけでなく、移動先の国、移動元の国に大きな影響を及ぼすのが「国際的な移動」の現実です。こうした現実について、原因や問題点を解明することは、現代の社会学の重要なテーマの1つです。
人身売買の現実も
なかには、現代版「人身売買」と言える実態もあります。かつて世界には、特定の人種や社会的身分に基づき、人間を奴隷として売り買いする時代がありました。現代では、そうした人身売買は影を潜めています。しかし、特に「開発途上の国々」から「先進国」に職を求めて移動する例の中には「人身売買」に似た現実が潜んでいることもあるのです。
日本も無関係ではありません。「日本語や技術が学べる」「日本に良い仕事がある」などと、実態とかけ離れた誘い文句にひかれ、借金をしてまで国境を越え来日する若者は少なくないのですが、彼らの中には、言葉が通じず相談する人もいない環境で、想像もしなかったような過酷な生活を強いられている人もいます。まさに、現代版「人身売買」と言える現実です。
負の要素をどうやって減らすか
こうした負の現実を少しでも減らすためにはどうしたらよいのでしょうか。
一人ひとりが置かれた状況は千差万別で、一筋縄ではいきません。しかし、人間はどこで生まれどこへ移動をしても、個人としての人権が尊重され、身体的にも精神的にも社会的にも良好な環境が保障されなければいけません。
政策的な提言はもとより、NGOやNPOによる支援、差別や偏見をなくす取り組みも「人の国際移動」を考えるうえで、重要な視点と言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 国際教養学部 准教授 佐々木 綾子 先生
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