現象学から読み解く、フランスの詩人ポール・ヴァレリーの思想
詩人ポール・ヴァレリー
20世紀フランスの詩人、ポール・ヴァレリーは、フランス語表現の可能性を追求するような非常に複雑で華麗な文体が特徴で、「ヨーロッパ知性の代表」とも呼ばれます。しかし、古典的な作風も影響したのか、彼の詩は後になって「形式が古くさい」「(師匠である)マラルメの二番煎じ」と酷評されることもあり、「時代遅れの詩人」とされた時期もありました。後にメルロー=ポンティという哲学者によって、再評価されることになります。メルロー=ポンティの哲学は、「我思う、ゆえに我あり」というデカルトの有名な思想とは対照的で、「精神」ではなく、「身体」に自分の基盤を移して、他者との関係を考え直すというものです。
メルロー=ポンティによる解釈
「自分が森を歩くとき、木から自分が見られている」「自分がモノを触るとき、手はモノに触られている」。こうした自らの思想を、自分より37年も早く生まれたヴァレリーの詩や文章の中に発見したメルロー=ポンティは、著作の中でことあるごとにヴァレリーの言葉を引用しています。ヴァレリーの思想の断片は、彼の詩だけでなく、彼が残したノートや書簡にも書き残されていました。中には恋人に宛てたラブレターも含まれています。そうした書簡やノートが親族などによって次々に公開され、ヴァレリーは現在でもフランス文学において重要な研究対象になっています。
小さなヒント
現代の日本に生きる私たちにとって、ヴァレリーやメルロー=ポンティの思想・哲学は難解です。その難解なヴァレリー研究においては、作品やノート、手紙に書かれたわずかなメモや表現が大きなヒントになることがあります。
グローバル化で異文化への理解が進んでおり、西欧文化の中心ともいえるフランスの文化や言語、教育、ポップカルチャーについても関心が高まっています。さらに、ヴァレリーやメルロー=ポンティの思想・哲学に触れることで、フランスやヨーロッパの文学・哲学の奥深い部分を理解するきっかけとなるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
大阪教育大学 教育学部 教育協働学科 グローバル教育部門 教授 井上 直子 先生
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