アメリカの太平洋理解の歴史と日本人の海洋観の違い
情報が少なかった太平洋
「大航海時代」ただなかの16世紀、まだ人々は世界の全貌をつかんでいませんでした。特に太平洋は未知の領域でした。最初に太平洋を「発見」したヨーロッパ人は、スペインの探検家バルボアです。彼は1513年にパナマ地峡を横断し、アメリカ大陸の西側に現在の太平洋がひろがっているのを発見しました。続いて1520年、航海者マゼランが南米大陸を南下し、のちのマゼラン海峡を越え、太平洋に到達しました。
海でつながる陸と陸
アメリカ人が残した、太平洋に関するおそらく最初期の記述を、ルディヤードという人の著作に見つけることができます。彼はイギリスのクック船長に同行して太平洋を航海しました。その本に載っている地図には、太平洋の周りに、中国や日本、南北アメリカがひろがる世界が描かれていました。なかでも注目すべきは、中国やユーラシア大陸とアメリカが、海でつながっているのを示したことです。それまでアメリカが中国と貿易しようとした場合、大西洋を渡る東回りのルートが常識でしたが、逆の西回りのルートがあることをこの地図は人々に教えました。これによって、アメリカ人の太平洋への進出が本格化したのです。
日本とアメリカの太平洋のとらえ方の相違
その後、太平洋を渡って中国と貿易をしたり、捕鯨を行ったりして、アメリカ人は太平洋との関係を深めました。さらには、太平洋について集まる情報をまとめ、それらを体系的に把握する努力も始めました。そこには、太平洋を大きな視点からとらえ、大陸と大陸をつなぐ通路として活用しようという明確な意図がありました。一方日本は、太平洋に面する国でありながら、そのような大きな視点から太平洋全体を把握する努力はしませんでした。日本人の海のイメージは「伊勢の海」や「相模の海」など、地域的でのどかなものに限られたのです。どちらがいいというものではありませんが、太平洋に関する歴史を考えるとき、国によって太平洋への認識と関与の仕方がここまで違うということは知っておく必要があります。
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先生情報 / 大学情報
東京大学 大学院総合文化研究科 アメリカ太平洋地域研究センター 教授 遠藤 泰生 先生
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