東京パラ種目「ボッチャ」が示す障がい者スポーツの可能性

東京パラ種目「ボッチャ」が示す障がい者スポーツの可能性

障がい者と社会をつなぐスポーツ

障がいがある人にとってのスポーツは、体力や筋力の向上、関節の可動域を広げるといった身体的効果だけでなく、スポーツクラブに参加したり、地域の施設を利用してトレーニングを行ったりすることで、学校や家庭、職場以外に社会との接点を持つという大きな意義があります。リハビリテーション学の領域では、こうした「社会参加のツールとしての障がい者スポーツ」という社会学的な観点からの分析や、人物や物体の動きをデジタル的に記録するモーションキャプチャーを使った運動学的分析を行うバイオメカニクスなど、多彩な研究が行われています。

科学的訓練が生む脳性まひ治療の可能性

障がい者スポーツの中で、ヨーロッパ発祥の「ボッチャ」は、重度の障がい者も取り組めることから日本でも普及してきました。互いに持つ球を、より目標球の近くに投げられた方が勝つというゲームで、シンプルな半面、高度な戦略や駆け引きが必要です。
2020年の東京パラリンピックの正式種目として、日本チームには金メダルの獲得が期待され、理学療法士主導の下で選手強化のためのフィジカルトレーニングが行われています。脳性まひの選手にもスピードトレーニングや呼吸トレーニングなど、科学的な理論に基づいた指導が行われており、収集したデータをもとにリスクの検証ができれば、将来的に脳性まひの治療にフィードバックされるでしょう。

スポーツが実現する共生社会の形

ボッチャでは最も障がいの重い選手(BC3クラス)は、競技アシスタントと共に試合に出場します。あなたもボッチャの競技アシスタントをめざせば、東京パラリンピックの舞台に立てる可能性があるのです。また、誰もが同じルールで戦うボッチャでは、健常者が重度の脳性まひのプレーヤーにかなわないこともいたって普通です。障がいの有無にかかわらず、個人の能力によって周囲からの評価が得られるボッチャは、私たちがめざす共生社会の姿を自然な形で提示してくれる競技であるともいえます。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 教授 奥田 邦晴 先生

大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 教授 奥田 邦晴 先生

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リハビリテーション学、スポーツ科学

メッセージ

勉強やクラブ活動などで忙しい毎日を送っていると、時間を効率的に使うことを意識するあまり、自分の興味や関心の向く先が狭められてしまうことがあります。しかし、その時は無駄に感じ、得にならないと思うことでも、人間の幅を広げ、社会に出た後の仕事や人間関係においてあなたを助けてくれることがたくさんあります。
受験を控えた今は難しくても、大学に入った後なら時間もとれるはずなので、気になることややってみたいことがあれば、諦めずに心に留めておいて、受験勉強の励みにしてください。

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2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。