認知症の人を支えるのは制度や専門家だけじゃない!
声を上げ始めた認知症の人たち
日本には認知症の人が460万人以上いると言われ、その人たちとその家族をどうやって支えてくかが大きな社会的課題になっています。そんな中で、2023年に認知症の施策を推進する「認知症基本法」が成立しました。これまで声を出せなかった認知症の本人たちが「認知症になっていても働きたい」「将来に希望を持って暮らしたい」と声を上げて、それが周囲の支援者や関係者を動かしました。そして、地方自治体が支援の取り組みに乗り出すという活動の高まりが、このような法制度につながったのです。
住民だからこそできる支援活動とは?
認知症に限らず日本の社会福祉の営みにおいて、法制度と並んでこれまで柱となってきたのが、実は地域の「住民活動」でした。自分の家族でもなく、仕事でもないのに「困っている人を助けたい」という関心や衝動が自発的な支援活動につながってきたのです。もちろん認知症の人にとって治療や介護をする専門職は必要です。しかし、本人や家族に声がけをする、話を聞く、日常的に関わって孤立しないようにするなど、制度や専門家に転換できないコミュニケーションの部分で地域住民は支えることができるのです。
認知症の人が行方不明にならないための訓練も
各自治体では住民活動を柱としたユニークな取り組みがあります。認知症の人のなかには、自分の居場所や帰り道がわからなくなる人がいます。そうした認知症の人をまちで住民が見かけたとしても、認知症の人への関わり方がわからないと対応が難しいため、福岡県大牟田市では防災訓練ならぬ「ほっとあんしんネットワーク模擬訓練」を行っています。認知症役の人が市内を歩き回り、見つけた人は声をかけるという訓練です。また神戸市では認知症の人が何かを壊したり、電車を止めたりしても家族が損害賠償金を支払わなくてもいい保険を創設しました。
認知症をなくすことは難しいですが、このように認知症の人が差別されず、共に幸せに暮らしていける社会(共生社会)や制度をつくることが今、求められています。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 人間福祉学コース 講師 手島 洋 先生
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