物質の色や発光をコントロールする技術

物質の色や発光をコントロールする技術

電子ペーパーをフルカラー表示に

電子ブックなどを読むための媒体として、「電子ペーパー」というハードウェアが開発されました。電気によって文字や画像を表示するものですが、液晶ディスプレイとは違ってバックライトがなく、とても自然な見た目で、ページを切り替えない限りは電力を消費しません。現在市販されているものは白黒表示しかできませんが、この電子ペーパーをフルカラー表示にするための研究が進められています。
こうしたディスプレイをはじめ、生活のさまざまな場面で使用されるものとして、物質の色や発光をコントロールする技術と素材が求められています。

銀は電圧によって変幻自在

物質に電気を通すことで色を変える研究は以前からあり、透明から赤に変わるなど、単色の変化は比較的簡単に実現できます。しかし、一つの素材を多色に変化させるのは難しいとされてきました。ところが、銀を使用することで、それが実現できそうなのです。
銀は、ナノ粒子と呼ばれるごく小さい粒の状態、特に10~20ナノメートルの大きさでは、黄色に見えることが知られています。その粒を大きくしていくと、次第に赤みを帯びてくるのです。このように、金属粒子には、粒子の大きさや形状で見える色が違ってくる性質があります。この性質をうまく使うと、電圧のかけ方によって大きさや形の違う銀のナノ粒子を作り分け、鏡面、黒、赤、黄、青という色を示すことができます。これらの色を組み合わせれば、理論的にはあらゆる色を表示できることになります。

原理を知る重要性

どのような電圧をかければ、どのような大きさや形の銀ナノ粒子ができるのか、その原理についてはまだわかっていないことが多くあります。そのメカニズムを解明できれば、銀だけでなくほかの物質でも色の変化が可能になるかもしれません。
さらに、ディスプレイへの応用だけではなく、例えば家の窓を、透明からさまざまな色へと自在に変えられる「スマートウインドウ」もできるでしょう。生活を、より快適に、よりカラフルにできる可能性を秘めているのです。

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千葉大学 工学部 総合工学科 物質科学コース 准教授 中村 一希 先生

千葉大学 工学部 総合工学科 物質科学コース 准教授 中村 一希 先生

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物質科学

メッセージ

あなたには、好奇心と積極性をしっかり持ってほしいと思います。子どもの頃は誰もが好奇心旺盛で、「どうして、どうして?」と聞いて周囲を困らせたことがあるのではないでしょうか。科学の研究においては、その「どうして?」が大事です。そうした気持ちをぜひ思い出してみてください。そうすれば、ワクワクする体験ができるでしょう。
大学とはワクワクする研究をする場所なんだ、という意識で進路選びをしてみてください。大学での研究は、ワクワクと好奇心をくすぐるものでないと意味がない、というのが私の持論です。

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