美しい花を咲かせる遺伝子組換え技術

美しい花を咲かせる遺伝子組換え技術

花の色を決めるのは何?

近年、珍しい色の花が遺伝子組換えによるバイオテクノロジーによって生み出されています。花の色を決めるのは、花びら(花弁)の細胞にたまった色素ですが、同じ色素がたまっていても、pH(酸性・中性・アルカリ性)や金属イオンの結合、花びらの細胞の形によっても変わって見えます。例えば、「アントシアン」という色素は、酸性では赤色ですが、アルカリ性では青色になり、鉄やアルミニウムなどの金属イオンが結合することによっても青色に変化します。

花びらだけに働きかけるプロモーター

花の色を変える方法はいくつかありますが、細胞のpHを調節する遺伝子や、金属イオンをためる遺伝子を組換える方法があります。しかしながら、pHの調節や金属イオンをためる遺伝子が植物の体のあちこちで働くと悪さをして、植物が成長できなくなってしまいます。そこで必要となるのが、花びらだけで遺伝子を作動させるための「プロモーター」と呼ばれるシステムです。プロモーターが、遺伝子がいつどこで働くかという指令を出すのです。
花びらの細胞だけでうまく遺伝子を作動させるプロモーターがアサガオから見つかり、これを使って花の色を変える研究が行われています。つくるのが難しいとされていた青いバラは、ほかの植物からとった遺伝子を入れることで実現しましたが、このプロモーターを利用すれば、もっと鮮やかな青いバラが実現するかもしれません。

細胞の形で質感や色合いが変化

この特殊なプロモーターを使えば、花びらの細胞の形を変えることもできます。すると、同じ色素がたまっている細胞でも、細胞の形状が変われば、色合いや質感が違って見えるのです。細胞が円錐状にとがった形をしていれば、ビロードのようなしっとりとした質感を持ち、濃い色合いに見えますし、細胞が平らな形をしていれば、光沢があり淡い色合いに見えるのです。
花の色の改良は遺伝子の微妙な制御が必要なため、難しさはありますが、人の心を癒やす花の研究はこのようにして進みつつあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 農学部 資源生物科学科 園芸科学研究室 准教授 白武 勝裕 先生

名古屋大学 農学部 資源生物科学科 園芸科学研究室 准教授 白武 勝裕 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

園芸学、農学、生物工学、生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

園芸科学研究分野では、花・野菜・果物といった園芸作物の遺伝子の研究をしています。具体的には、大きくて甘い果物、健康に良い野菜、きれいな花を作るための遺伝子を探しているのです。私たちの研究室は何百という種、何万という品種の園芸作物を相手にしており、研究することがまだまだたくさんあります。ゲノム科学に代表される近年の生物学の発展、あるいはテクノロジーの進展によって、多様な園芸作物の遺伝子を探索できる環境が整ってきました。あなたも興味があれば、ぜひこの研究に参加してください。

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名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。