植物由来の薬や化粧品を作る! 天然素材の創薬研究

植物由来の薬や化粧品を作る! 天然素材の創薬研究

植物や微生物から新たな化合物を発見

創薬の研究は、薬の成分となる化合物を発見することから始まります。
「生薬学」「天然物化学」は天然素材の化合物を調べる分野で、研究者たちは植物、微生物、海洋生物、昆虫、動物などが産生する化合物の中から、薬に使えそうな「新規化合物」を探します。この分野の研究者である大村智博士は、微生物から発見した化合物をもとに、熱帯地方に広がる寄生虫感染症の特効薬を開発して2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。この薬によって、数億人が失明の危機から救われています。

古くからある薬草から新成分が見つかる

新規の化合物の中には、化粧品や食品の成分になるものもあります。センリョウ科の「ヒトリシズカ」は血行促進や利尿作用の効果があるとして、古くから薬用茶などに用いられてきた薬草です。美肌効果もあるとされて化粧品の原料にもなっていますが、その成分や作用はよくわかっていませんでした。そこで、ある研究者は化粧品会社と共同で、北海道に自生するヒトリシズカの成分を調べる研究を行い、新たな化合物を発見して、その化合物に皮膚細胞の再生を促進する効果があることを明らかにしました。この化合物は「ヒトリン」と命名されて、配合成分一覧にヒトリンの名前が入った化粧品が化粧品会社から発売されました。

レモンの香り成分は数百種類!

1つの植物にはとても多くの成分が含まれています。例えば、レモンと言えばビタミンCがすぐに頭に浮かびますが、レモンの成分は香り物質だけでも数多く含まれています。
同じ植物でも、根、茎、葉、花、実など部位によって化合物が違うことはよくあります。植物は育つ場所・環境によっても成分が変わるため、身近な植物を採取して研究材料にしている研究者もいます。薬草として長く使用・研究されてきたものも含めて、どんな植物も新たな化合物発見の可能性を秘めているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

北海道医療大学 薬学部 創薬化学生薬学講座 講師 金 尚永 先生

北海道医療大学 薬学部 創薬化学生薬学講座 講師 金 尚永 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

天然物化学

メッセージ

私は未知の化合物を植物から見つける「宝探し」の研究をしています。北海道には地域特有の植物が多いことから身近な植物の研究をメインにしていて、植物を探しに出かけることもよくあります。生薬学のテーマは幅広く、同じ植物の研究でも、有効成分を得るために遺伝子に着目した研究も行われています。一瞬のひらめきよりも、コツコツていねいに作業を続ける気長さ、ねばり強さが大切です。生物に興味があり、研究対象にじっくり向き合えるタイプの人に向いている分野だと思います。

北海道医療大学に関心を持ったあなたは

北海道医療大学は、薬学・歯学・看護学・臨床福祉学・臨床心理学・理学療法学・作業療法学・言語聴覚療法学・臨床検査学の6学部9学科を擁する、医療系総合大学です。9つの学科と歯学部附属歯科衛生士専門学校が密接にかかわり合い、「チーム医療」に最適な教育環境を提供しています。当別と札幌あいの里、2つのキャンパスには約3,500名が集い、学生の約3割は道外出身です。2万人を超える卒業生が、医療の担い手として全国各地で活躍中。本学に寄せられる求人は年間約30,000人にも及び、高い就職率を誇っています。