建築家の功績を再考し、未来の都市を考える
日本の都市開発
高度経済成長期の日本では、東京オリンピックや大阪万博が開催され、建築家たちが才能を最大限に発揮して未来都市を提案してきました。しかし、オイルショックにより経済成長に歯止めがかかってからは停滞した社会が訪れ、エリートによる斬新な「都市デザイン」よりも人々の話し合いを反映した「まちづくり」が重視されるようになりました。その後、バブル景気などの経済の波を何度も経験した現在の日本は、国や自治体ではなく、民間の力でアイデアを出し合って持続可能な街をつくることが求められています。
建築家、丹下健三
超高層ビルが立ち並ぶ新宿や渋谷は、いまだに激しく変化し続けています。しかし、コロナ禍による新しい生活様式が定着しつつある今、現在進行する巨大な開発を続けるべきなのかを再考する必要があるでしょう。そのためには、都市の更新を、単にどれくらいもうかるかという経済効果的な指標だけで評価すべきではありません。今の東京で行われていることが高度経済成長期の建築家たちのビジョンと連続しているのか、あるいはまったく違うことが起こっているのかを、アカデミックな立場から分析し提案することが重要です。
高度経済成長期に東京の街を考えた建築家たちは、増加する人流や交通網を整理するために、街を立体的にとらえて解を導いてきました。中でも丹下健三は、広島平和記念公園・香川県庁舎・代々木競技場という3つの重要文化財を設計した、戦後を代表する建築家です。単に建築物を設計するだけでなく、東京の都市構造そのものを提案した都市デザイナーでもありました。丹下健三が公共建築をどのようにとらえたかを研究することは、これからの持続可能な都市のヒントになると考えています。
次の時代へ
現在、東京の渋谷では、代々木競技場の保全を図りながら、スポーツの要素と神宮の森の自然を活用した街づくりが行われています。素晴らしい建築を活用しながら、蓄積された知見を見直すことは、次の時代の街づくりの起点になると考えられます。
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先生情報 / 大学情報
千葉大学 工学部 総合工学科 都市工学コース 准教授 豊川 斎赫 先生
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