「あたりまえ」の環境を大切にした障害幼児の理解と支援

「あたりまえ」の環境を大切にした障害幼児の理解と支援

遊びや生活から学ぶ

生まれた子どもに障害があることを知った保護者の中には、早く障害のある子どものための専門機関につながり、専門的な指導を受けてもらいたいと思っている方もいます。専門機関で受ける指導はもちろん大切です。ただ、子どもは日常の遊びや生活からも多くのことを学びます。例えばおもちゃ遊びやお絵描き、絵本の読み聞かせといった、その子がやりたいこと、興味があることを通して運動能力や情緒、認知的能力が育まれ、人とのつながりや自助スキルなどが身につきます。これは障害のある子どもも同じなのです。

就学移行の支援

また、障害のある子どもが小学校に入学する「就学移行」期には、様々な支援が行われています。その子の幼児期の姿について学校に適切に引継ぎ、毎日の授業にいかに慣れていってもらうかが大切でしょう。しかし、初めて小学校に通う子どもにとっては勉強のことだけではなく、例えば休み時間の過ごし方や友達との関係性など、大きく変わった環境にいかに適応して、自分の居場所を作れるかどうかも大切です。たとえ同じ障害でも、障害の影響の強さや就学後に置かれる環境は千差万別です。そのため子どもだけでなく、子どもと環境との相互作用にも目を向けなくては、就学期の子どもの実態を正しく把握できません。

特別支援教育と幼児教育

障害のある子どもへの教育を「特別支援教育」といい、障害の有無にかかわらず、すべての幼児期の子どもに対する教育を「幼児教育」といいます。特別支援教育の分野では、これまで障害のある幼児期の子どもについての知見を様々に確立してきましたが、それらは幼児教育と完全に切り離せるものではありません。例えば生活や遊びなどあたりまえの環境からヒントを見つけることを含めて、特別支援教育と幼児教育双方の知見を生かすことが必要です。そこに、一人ひとりの子どもに向き合い、その子と環境の相互作用について考える「生態学」のような視点を加えることで、子どものありのままの姿を出発点とした、より良い教育のあり方が見えてくるのです。

参考資料

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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千葉大学 教育学部 学校教員養成課程 准教授 真鍋 健 先生

千葉大学 教育学部 学校教員養成課程 准教授 真鍋 健 先生

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メッセージ

教育や保育に携わろうとする方には、専門領域ごとの知識・技能に加えて、子どもたちとどう関わろうとするか、その態度が問われます。子どもと関わる中で自分を高められる方は、教育学部に向いていると思います。また、時代の変化が激しい現在では、1つのことだけにこだわらず、複数のことに目を向けてほしいです。例えば、私は特別支援教育と幼児教育の両方を研究しており、だからこそ発見できることも多いのです。本学では海外留学にも力を入れていますから、ぜひここで視野を広げ、自分や世界について見る力を養ってほしいです。

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千葉大学は、他大学にないユニークな学部を含む全11学部を擁する総合大学です。学際的文理融合の精神のもとに、教育研究の高度化、産官学の連携推進、国際交流の拡充を進めています。近隣には放送大学、国立歴史民族博物館などがあり、各分野で共同研究が行われています。「つねに、より高きものをめざして」の理念のもと、世界を先導する創造的な教育・研究活動を通しての社会貢献を使命とし、生命のいっそうの輝きをめざす未来志向型大学として、たゆみない挑戦を続けます。