身近な食材が健康を支える! 食品免疫学の可能性

免疫機能に影響を与える食べ物を探る
食品免疫学は、身近な食品が人の免疫機能に与える効果を研究する分野です。ここでの「免疫機能」とは、体の防御システムのことであり、病気と戦う能力のことを意味します。食品には、白血球の活動を活発にし、体内の有害な細菌やウイルスと戦う力を向上させるものがあります。日々の食事から健康を支える可能性を探究し、野菜や果物、伝統的な発酵食品など、身近な食材の研究を進めています。
野沢菜の秘密を解き明かす
49種類の野菜について免疫細胞を活性化させる効果についての調査で、長野県の伝統食材である「野沢菜」に高い活性があることがわかりました。野沢菜漬けでは、発酵過程で増える乳酸菌が重要な役割を果たしています。生の野沢菜に比べ、半年間塩漬けにした野沢菜漬けでは10倍以上の高い効果があることが判明したのです。野沢菜漬けの免疫増強においては、乳酸菌が関与することが明らかになっています。また、ブドウやリンゴに含まれるポリフェノールには炎症を抑える効果があることもわかってきました。これらの研究では、細胞やマウスを使った実験が行われています。その成果は、実生活に直接役立つ知見として期待され、将来的には機能性食品や予防医療への応用も視野に入れられています。
科学で解き明かす伝統の知恵
野沢菜の漬物では、塩分によって雑菌の増殖が抑えられる一方、塩に強い乳酸菌は増殖します。また、乳酸菌が作り出す酸により、ほかの菌の増殖は抑制され、結果として乳酸菌が優先的に存在するようになり、免疫細胞を活性化させる効果を高めることが確認されています。現在、乳酸菌に関する研究結果は食品メーカーとの連携によって、ウイルス感染症の予防法の開発へとつながることが期待されています。免疫調節作用をもつ食品を食べることは、誰もが実践できる健康管理法としても注目を集めており、伝統的な食文化と最新の科学を結びつけることで、私たちの未来を支える新たな可能性が広がっています。
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先生情報 / 大学情報

信州大学農学部 農学生命科学科 生命・食品科学コース 教授田中 沙智 先生
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先生への質問
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