科学の力で自然との共生バランスを取り戻す
縄文時代の自然バランスを手本に
縄文時代、人々は自然と上手に共生していました。ところが、現在は緑が少なくなり、大気の状態はよくありません。その結果、生物多様性の減少や、気候の変化、健康への悪影響などの問題が生じています。これらの問題を解決するためには、現在の環境を見直す必要があります。縄文時代に実現されていた自然とのバランスを手本に、都市の緑化や都市型庭園のあり方を研究し、生物多様性の回復、大気の正常化や健康増進を目指すのです。
研究室の二酸化炭素濃度測定から
研究の進め方としては、研究室内で一定期間ごとに植物のない状態と、ある状態の二酸化炭素濃度などの屋内環境品質(IEQ)を測定して比較します。また、研究室のバルコニーでは24時間撮影のカメラを設置し、こちらも植物がない状態と、ある状態それぞれについて、訪れる生き物を記録して生物の多様性を調べます。研究室のデータが集まれば、次は大学の教室で同じように屋内環境品質(IEQ)の測定をします。これまでの研究から、教室の二酸化炭素濃度が高いと学生の成績が下がるというデータが得られています。教室に植物を置いて二酸化炭素濃度を下げることができれば、成績向上にも効果があると期待されます。教室の次は市内、その次は県内と、二酸化炭素濃度の測定範囲を広げていきます。将来的には社会科学の研究者と協働することで、都市環境の改善を実現していきます。
科学の面白さの体験にも
研究はまだ始まったばかりですが、研究室の空気についてのデータが得られつつあります。植物がない状態の二酸化炭素濃度は、昼になると朝に比べて約2倍に上がりますが、酸素濃度は下がります。これには人の活動が影響していると考えられます。また、エアコンをつけると揮発性有機化合物 (TVOC)が悪くなるというデータもあり、フィルターに付着した微生物が散らばるためだと考えられます。こうした身近な環境でデータ測定や分析を体験できることから、この研究は学生たちに科学の面白さを伝えることにも繋がっています。
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先生情報 / 大学情報
叡啓大学 ソーシャルシステムデザイン学部 ソーシャルシステムデザイン学科 教授 ラサール ミヒャエル ウルフガンク 先生
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