人の心理や行動が経済や社会に与える影響を調べる実験経済学

人の心理や行動が経済や社会に与える影響を調べる実験経済学

経済で実験!?

あなたは、市場でマグロの競りに参加することになったとします。いくらで競り落としたいかは決めています。しかし、隣で競りに参加している人がどんな金額を提示してくるかはわかりません。また、競りに出されるマグロの質や量によっても価格は変わってきます。このように、経済はさまざまな要因により変動していくものです。これらの要因がどのように働くのかを考えるのが経済理論です。これまでは、「経済学の理論は実験では検証することができない」と言われてきましたが、最近では実験を通じて経済の理論を調べる「実験経済学」という新しい経済学の研究が盛んに行われるようになっています。

人間は「変なこと」をしてしまう

経済は、いろいろな人々の相互作用から生み出されるものです。では、人々はどんな意思決定をしたり、どんな相互作用をするのでしょうか。実験の結果、わかってきたのは、「従来の経済モデルは案外うまくできていて、マーケットは十分に機能する」ということです。その一方で人には変なことをしてしまう「クセ」があり、うまくいかない部分が出てくることがあります。行動経済学ではそうした要因を調べます。そこには心理学や神経科学、また、個人の選択に政府が関与すべきか、といった哲学的な問題まで関わってきます。最近では、fMRI(機能的磁気共鳴画像)を使って意思決定をするときの脳の動きを調べる神経経済学という研究も行われています。

「クセ」をパターン化

経済学の理論はとても有用で、お金もうけをしたいなら心理的なクセにとらわれないことが重要です。一方で、人が合理性から外れて変なことをしてしまうクセを持っていることを知るのも重要です。合理的ではないクセが、進化の歴史の中で淘汰(とうた)されていないのには何か意味があるのです。クセをパターン化し、そうしたクセのパターンからどんな経済現象が出てくるのかを分析するのも一つの考え方です。つまり、合理的だけではなく、人に特有な意思決定を絡めながら経済や社会を考えるのはとても重要なのです。

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先生情報 / 大学情報

明治学院大学 経済学部 経済学科 准教授 犬飼 佳吾 先生

明治学院大学 経済学部 経済学科 准教授 犬飼 佳吾 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

実験経済学、行動経済学、経済学

メッセージ

志望大学を選ぶとき、いろいろなことを考えて意思決定をするでしょう。経済学には、人々の意思決定がどのようになされるのかに注目した実験経済学、行動経済学という新しい学問分野があります。2017年ノーベル経済学賞を受賞したのも行動経済学分野であり、今ホットで活発な研究が世界中で行われています。
明治学院大学経済学部経済学科では実験経済学、行動経済学の教育研究を積極的に進めています。経済実験ができる国内最大規模の実験室も開設されました。ぜひ一緒に、経済実験を通じて、経済学を体験しながら勉強しましょう!

先生への質問

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明治学院大学に関心を持ったあなたは

150年以上もの歴史を持つ明治学院大学。本学の起源は、1863年にアメリカ人宣教医師ヘボン博士が開設した英学塾から始まります。無償で診察を行いながら、英和・和英辞典を編纂し、ヘボン式ローマ字でも有名なヘボン博士。その信念「Do for Others」を教育理念とし、本学ではグローバル社会に対応できる学術知識と教養を培い、他者とともに道を切り開ける人材を育成しています。