会社は何歳まで生きるのか? 「企業の寿命」を測定する

会社は何歳まで生きるのか? 「企業の寿命」を測定する

会社にも寿命がある!?

自明のことですが、私たちには寿命があります。動物だけでなく、植物にも物体にも寿命があります。会社という組織も同じです。永久に続く組織など、おそらく存在しないでしょう。
それでは、会社はいったい何歳ぐらいまで生きられるものなのでしょうか? そもそも、「企業の寿命」はどのように測定すればよいのでしょうか?

「会社の寿命」=30年という説

1984年、『会社の寿命』という本が出版されました。これは、日本の企業を対象に、1896年から1982年までの間の「総資産額100社ランキング」というデータを利用して、「企業の寿命」を測定したものです。つまり、「企業の寿命」を「会社が栄えた期間」と考え、その指標として「総資産額上位100社内に入っていた年数」をとりあげ、その平均値を算出したのです。この方法によって、「日本の企業の寿命は、平均約30年」という説が導かれました。
この算出方法には、いくつかの欠点が指摘できます。そもそも「総資産額100社ランキング」というデータのみに依拠することへの疑問があります。それを認めたとしても、個々のランキングとランキングの間隔が一定でなかったり、合併によって「消滅」とみなされる会社があることや、1896年と1982年の経済環境の変化が考慮されないことも問題です。これらを補正し、戦後だけを見ると「企業の寿命」は50年以上ということになります。

測定することの意義

このようにして導かれた「企業の寿命」は、あくまで一つの指標にすぎません。しかし、こうした測定しにくい事象をあえて測定し数値化することによって、私たちは企業というものの性質の一部を把握し、現実を理解することができるのです。
「企業の寿命」の長さは個々人の人生設計だけでなく、年金のような政府の社会保障政策にも影響を与えます。「企業の寿命」の測定は、企業と社会の関係性を研究するための一つの材料であり、経営学の一環をなすものとも言えるのです。

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東京大学 教養学部 総合社会科学科 教授 清水 剛 先生

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経営学というと、一般には「お金もうけのための研究」などと受け取られがちです。しかし、経営学は単にそれだけのものではなく、もっと広く深い意味のある分野なのです。すなわち、企業と社会、企業と人間のかかわり合いを多角的に考察する学問体系が経営学だと言えるのです。経営学に限らず、大学で学ぶ領域やテーマを考えるときには、イメージや一見した印象、あるいは先入観で選んだりせず、それぞれの学問の背後に広がる広大な領域を見てほしいです。そうしてこそ、納得のいく大学生活が送れるのではないでしょうか。

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