「英語学」に収まらない、分野横断的なランゲージアセスメントの世界
大学入試は「統合型テスト」の時代に
例えば2021年から導入された大学入学共通テストの英語では、身近な話題や図表を使った英文が多く出題されています。大学入試は、従来のセンター試験のような「技能別テスト」から、複数の情報から大意を掴んだり特定の情報を探したりする力を求める「統合型テスト」に変化してきています。しかし小中高の英語教育では、現在も、一言一句の意味を捉えることに重点が置かれています。いわゆる「学校英語」における、教授法、カリキュラムは見直されるべき時代となりました。
科学の力で認知プロセスを視覚化する
「ランゲージアセスメント(言語能力を測定するテストに関する研究)」では、実際に英語を使う時に発揮するような言語運用能力を正しく測るための方法を研究しています。評価方法が変われば、カリキュラムも見直す必要が生じ、評価方法とカリキュラムを連係させて、より効果のある英語教授法を日本に定着させていくことはとても重要です。先行研究では、一言一句を捉える時よりも、大意を把握しようとする時に英語運用能力の差が顕著に現れるとされています。しかし、統合型テストがその能力を正しく測れるかどうかはまだ解明されていません。そこで、眼球測定装置を用いて目の動きを追跡し、言語認知プロセスを視覚化することで、高得点者と低得点者の認知処理の違いを明らかにする研究が行われました。その結果、高得点者は文章全体を見ているのに対して、低得点者は前半ばかり見ている、または最後まで読み切れていないことがわかりました。
日本の英語教育の未来
このように、近年の言語研究では、「科学」など他分野で得られた知見を融合した、分野横断的な研究が進められています。他にも、データを集めて分析するという点では「経済学」の、根拠に基づいた解決策を提案するという点では「社会学」の知見が役立てられています。分野を超えた幅広い研究によって、近い将来、日本の英語教育は一変するかもしれません。
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