講義No.09023 機械工学

どんな物でもつかめる夢のようなドラえもんの手!

どんな物でもつかめる夢のようなドラえもんの手!

優しいロボットハンド

どんな物でも優しくつかむことができる、ドラえもんの手のような「ロボットハンド(グリッパー)」の研究が、ドラえもんの母国・日本で進められています。
このグリッパーの内部構造は、「ビーズクッション」に例えることができます。ビーズクッションは袋にゆとりがあるため、中のビーズが自由に動いてさまざまに変形します。袋を片側から絞り込んでいくと、ビーズの動くゆとりがなくなり、クッションは硬くなります。グリッパーはこうした硬さ・軟らかさの状態を変える機能をもっています。

「ジャミング転移」がカギ

グリッパーは、軟らかい袋状のシリコンゴムが二重になっており、その間に粉体が入った構造になっています。これを、対象物をすっぽりと包み込むように押し当てます。対象物に馴染んだところで二重ゴムの間の空気を抜くと、粉体が固まり、ゴム全体がその形を維持するので、対象物をつかめます。その後空気を入れるとゴムは元通りに軟らかくなり、対象物を放すことができるという仕組みです。こうした粉体の振る舞いは「ジャミング転移」と呼ばれています。
従来のロボットハンドは人間の指を模しており、対象物を点で支えます。そのため点に力が集中し、対象物によっては優しく持とうとしても、つぶしたり壊したりしてしまう場合がありました。しかし、このグリッパーは面で支え、対象物に圧力をかけないので、持ち上げられる対象が大きく広がるのです。

災害現場など、広がる可能性

このグリッパーなら、つぶれやすく、形や大きさがまちまちな物でもつかめます。また従来のロボットハンドにあるような、モーターや関節、歯車といったメカニズム部分がないため、水中でも使えます。ボタンを押したり、バルブを回したり、配電盤を開けたりとさまざまな作業ができるので、移動するロボットに搭載することで、災害現場での活躍も期待されます。今後、この日本らしい繊細さを備えたグリッパーの耐久性をより高め、軽くてコンパクトな構造にすることで、その可能性はさらに広がっていくでしょう。

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東北大学 大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 准教授 多田隈 建二郎 先生

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メッセージ

今やインターネットの登場やAI(人工知能)研究の恩恵で、検索すれば何でも答えが出てきます。すぐに答えに行きつけるのは便利ではありますが、ぜひ自分で考える習慣をつけてください。検索すれば、そこそこの答えには行きつきますが、それはゲームをする前に攻略本を読んでしまうようなものです。一見効率は良さそうですが、まず自分で考えてみる人とそれをしない人では、10年、20年後に大きな差がつきます。
志望大学を決める時も、特に理系で好きなことがあるなら、どこの研究室に行くかまで考えて大学を選ぶことをお勧めします。

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建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。