どんな物でもつかめる夢のようなドラえもんの手!
優しいロボットハンド
どんな物でも優しくつかむことができる、ドラえもんの手のような「ロボットハンド(グリッパー)」の研究が、ドラえもんの母国・日本で進められています。
このグリッパーの内部構造は、「ビーズクッション」に例えることができます。ビーズクッションは袋にゆとりがあるため、中のビーズが自由に動いてさまざまに変形します。袋を片側から絞り込んでいくと、ビーズの動くゆとりがなくなり、クッションは硬くなります。グリッパーはこうした硬さ・軟らかさの状態を変える機能をもっています。
「ジャミング転移」がカギ
グリッパーは、軟らかい袋状のシリコンゴムが二重になっており、その間に粉体が入った構造になっています。これを、対象物をすっぽりと包み込むように押し当てます。対象物に馴染んだところで二重ゴムの間の空気を抜くと、粉体が固まり、ゴム全体がその形を維持するので、対象物をつかめます。その後空気を入れるとゴムは元通りに軟らかくなり、対象物を放すことができるという仕組みです。こうした粉体の振る舞いは「ジャミング転移」と呼ばれています。
従来のロボットハンドは人間の指を模しており、対象物を点で支えます。そのため点に力が集中し、対象物によっては優しく持とうとしても、つぶしたり壊したりしてしまう場合がありました。しかし、このグリッパーは面で支え、対象物に圧力をかけないので、持ち上げられる対象が大きく広がるのです。
災害現場など、広がる可能性
このグリッパーなら、つぶれやすく、形や大きさがまちまちな物でもつかめます。また従来のロボットハンドにあるような、モーターや関節、歯車といったメカニズム部分がないため、水中でも使えます。ボタンを押したり、バルブを回したり、配電盤を開けたりとさまざまな作業ができるので、移動するロボットに搭載することで、災害現場での活躍も期待されます。今後、この日本らしい繊細さを備えたグリッパーの耐久性をより高め、軽くてコンパクトな構造にすることで、その可能性はさらに広がっていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 准教授 多田隈 建二郎 先生
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