ロボットハンドの進化は、つかみの進化
産業用ロボットハンドに求められる技術
製造現場では、つかむ物の種類、物体の硬さや柔らかさ、厚さの違いなどによってそれぞれ専用のロボットハンドが使われています。効率化のためには、ひとつのロボットハンドで多様な物をつかめる技術が求められます。人の手は脳の一部といわれ、経験や実際に触れることで力の違いを確かめ、力の入れ方や持ち上げ方を変えています。物にそっと触れて硬さや重さを確かめ、重い物を持ち上げるためには腕全体の剛性を上げていることもわかってきました。こうした判断と対応は、AI(人工知能)の進化によってロボットでも可能になりつつあります。数ミリサイズの精密部品をつかんで組み立てることもできるようになりました。
つかむためのポイント
ロボットハンドの技術開発には、人間の生理現象の研究が生かされています。物をうまくつかむポイントのひとつが、いかにして接触面を増やすかです。例えば山盛りになった野菜から1個をつかみ取るには、人間は接触面を多くするためにちょっと転がして、ほかとの間にすきまを作って3本以上の指でつかめるようにします。この動きがロボットにも応用されています。
もうひとつのポイントは、摩擦を増やすことです。摩擦は抵抗で、くっつく力になります。汗に含まれる水分にも摩擦力が働き、薄いレジ袋を開いたりする時に役立ちます。これを参考に、つかむ・離す際に、液体を出したり乾かしたりするハンドも作られています。
協働するならこんな分野
人口減で人手が不足する製造現場では、多品種を受注生産することが増えています。また、例えば農業では出荷場での箱詰めなどで人手不足を補えるでしょう。ロボットハンドが、お弁当工場でさまざまな形態の惣菜を「一手に」つかんでバランス良く短時間に盛りつけることができれば、人間は最終段階で目視チェックするだけといったことも可能になります。他にも物流倉庫、介護、医療など人間とロボットとの協働が増える中で、ロボットハンドの進化は不可欠となっているのです。
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金沢大学 理工学域 フロンティア工学類 教授 渡邊 哲陽 先生
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