「くっつく」「はなれる」から始まる磁石の世界

「くっつく」「はなれる」から始まる磁石の世界

紀元前2600年には磁石が使われていた!?

「くっつく」と「はなれる」の力で身近な磁石は、さまざまな製品に使われています。その歴史は意外と古く、書物によると、紀元前2600年の中国で戦の陣取りを決める「指南車」に使われたとあります。中世のルネサンスでも三大発明の一つの羅針盤には磁石が使われていますし、19世紀では「アンペールの法則」や「電磁誘導の法則」などが発表され、磁石に関係した電磁気学が急速に発展しました。

世界初の人工磁石は日本が発祥の地

しかし人工的に磁石がつくられたのは、20世紀に入ってからです。1917年、東北帝国大学(現在の東北大学)教授の本多光太郎氏が発明した「KS鋼」は人類初の人工磁石であり、当時は世界最強の磁石でした。その後、おもちゃや家庭用マグネットなどまでにも使われているフェライト磁石の原型となる「OP磁石」、アルニコ磁石の原型となる「MK鋼」などが日本で次々に開発されました。そして、1984年、現在世界最強と言われる「ネオジム磁石(ネオジム・鉄・ボロン系焼結磁石)」が、住友特殊金属(現在の日立金属)の佐川眞人氏によって開発されました。その後、ネオジム磁石の性能もさらにあがり、KS鋼の登場からわずか90年の間で磁石の強さは約60倍になりました。その用途は全産業にわたり、ハイブリッドカーや風力発電、さらには省エネタイプの家電製品のモーターに欠かせないものとなっています。

磁石の歴史は材料開発の歴史

磁石は、大きく分けると鉄の酸化物を利用したフェライト磁石、アルニコ磁石などの合金系磁石、ネオジム磁石などの強力な希土類磁石、の3種類があります。希土類磁石の作り方は、まず鉱石から必要な金属を取り出し、原料を合わせて溶解して合金にします。それを細かく粉砕して型に入れ、強い磁場をかけてN極とS極の向きを揃えながら成型し、焼き固めます。
さらに強力な磁石となる新材料を見つけるには、粘り強く研究していくしかありません。磁石の歴史は、まさに材料開発の歴史なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東北大学 工学部 材料科学総合学科 知能デバイス材料学コース 教授 杉本 諭 先生

東北大学 工学部 材料科学総合学科 知能デバイス材料学コース 教授 杉本 諭 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

材料科学、材料工学

メッセージ

新しい材料を開発することは、簡単なことではありません。基礎をしっかりと学び、その知識と経験を生かして粘り強く研究し続けることが必要です。しかし、一つの新材料の発見が、世界平和や産業界の大きな改革に結びつき、社会を大きく変える可能性もあります。したがって材料研究は、自分を高め、世の中にも貢献できるやりがいのある仕事です。自分の中で限界を設定せず、より上をめざしてがんばりましょう。また、材料学は、グローバルな研究分野です。高校生のうちから英語もしっかり勉強しておくと、あとあと役に立つと思いますよ。

東北大学に関心を持ったあなたは

建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。