コンピュータと人間の関係を明るくポジティブに変える「感性情報学」
感性と工学の融合
「感性工学」は1980年代後半に日本で生まれて世界へと広がった新しい学問です。イメージや感情、センスといったいわゆる「感性」を科学的に研究して、人間力を重視した豊かな社会づくりに貢献しようとする工学分野です。従来あいまいなものとされていた感性を計測して定量化することで、人間が感じる快適さや心の潤いを、製品やシステム設計などの工学にうまく取り入れることができるようになります。コンピュータによる情報処理に感性を活用する「感性情報学」の研究でも、日本が世界を一歩リードしています。
言葉ではなく「印象」で相互に検索
例えば画像や動画、音声など、異なるメディアのデータを、言葉ではなく内容の印象に基づいて相互に検索できれば、自分のイメージにぴったり合った映像と音楽を同時に楽しむといったことができます。
まず、各データに対する美しさ、明暗、自然な感じなどの印象とその度合いを心理学的手法で測定します。そこから共通する要素を見出し、各メディアデータの印象を数値で表した空間座標に置き、互いに対応づける、という方法で実現します。「元気を出したい」「清々しい気持ちになりたい」など、気分や個性に合わせて検索結果を変化させることも可能です。
ポジティブ・コンピューティングで明るい未来へ
この技術をコンピュータと人とのインターフェイスに応用すれば、もっと自由で柔軟なコンテンツ検索や活用ができます。例えば、撮影した動画を自動的に分析してシーンに合ったBGMで演出したり、ドライブの時に車窓の風景やスピードを分析して、その時々にマッチする音楽を自動選曲したり、といったことが可能です。リハビリテーションやメンタルヘルスなどの医療・福祉分野でも、ケースごとに治療やケアに最適な環境づくりへの活用も期待できるでしょう。
あいまいと思われがちな人間の「感性」をコンピュータにより抽出し、新たな活用モデルを構築する感性情報学・感性工学的アプローチの可能性は無限大なのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
京都工芸繊維大学 工芸科学部 設計工学域 情報工学課程 教授 寶珍 輝尚 先生
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感性情報学、感性工学先生が目指すSDGs
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