「美しさ」は人間の生きる力と直結する!
「美」という漢字からわかる「美しさ」の意味
私たちは自然豊かな景色や調和のとれたまち並みを見ると「美しい」と感じます。しかし、そもそも美しさとは一体なんなのでしょうか。この問いの答えを探るために「美」という漢字の成り立ちを見てみましょう。「美」は「羊」と「大」という2つの字から成り立っています。「大きい羊」とは、漢字が生まれた中国大陸の人々のおなかを満たしてくれる食材です。つまりこの大きな羊のように、人間が生きるための力となってくれるものを私たちは「美しい」と考えているのです。
生命力があふれるもの、秩序あるものは美しい
「美しさ」=「生きるための力となるもの」と考えると、いろいろなことが腑(ふ)に落ちます。例えば魚がたくさんいてサンゴ礁に囲まれた海と、ゴミが散乱した海を比較したとき、多くの人は前者が美しいと思うでしょう。それは水が澄んでいて魚がたくさんいる海のほうが、人間が生きるために必要な生命力に満ちているからです。
バランスのとれた美しいまち並みは、長く人が生きることのできる環境があることを意味します。風景やまち並みに限らず、美しいと感じる「人」や「もの」はすべて、人間が生きるために必要なものとつながっています。
「美しさ」の感覚を磨くために必要なこと
このように、美しさは人間の本能的に生きる力と深く関わっていますが、現代人の暮らしは、生きる力とは切り離されています。動物を狩って食べたり、雨風をしのぐための寝床を探したりする必要もありません。安全で便利な世の中ではあるのですが、一方で、生きる力によって磨かれてきた美の感性が鈍っていく傾向にあることは否めません。
したがって美の感性を磨くためには、かつて人間がしてきたような暮らし方、生き方を体験してみるのも一つの方法でしょう。例えば、便利な道具を持たずに自然の中で数日生活してみれば、自分たちが本能で何を求めているか身をもって体感でき、「美しさ」を理解する感覚が磨かれるでしょう。
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京都美術工芸大学 工芸学部 美術工芸学科 教授 中井川 正道 先生
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