一時的な故障は宇宙線のせい? LSIの信頼性を高める
LSIの信頼性を高める
今、スマートフォンやコンピュータだけでなくほとんどの電気で動くものに、電子制御のためのLSI(大規模集積回路)が使われています。LSIは1cm角程度のシリコン半導体チップの上に100億個を超えるトランジスタを載せて回路をつくった部品です。トランジスタとは電気信号の増幅やオン・オフの切り替えをするものです。チップが野球のグラウンドだとすると、そこにボールペンでびっしりと線を引くようなスケール感で電気信号の経路が張り巡らされています。
LSIが故障すると機器の誤作動を招きます。特に、医療機器や自動車、スーパーコンピュータ、通信システムなどの誤作動は、人命や巨額の財産を失うリスクもあります。そのため、LSIの信頼性を高める技術が求められています。
素材の経年劣化を防ぐ
LSIの故障原因の一つに、酸化膜などの素材の経年劣化があります。これまで、どのように劣化していくかはっきりわかっていませんでした。そこで、自動車に使うLSIを、走行時の最悪の環境(125℃、0・75V)で動作させて、145日間にわたる計測が行われました。その結果、一定のパターンで性能が悪くなることがわかり、先々の劣化を見込んで設計するなど、誤作動を防ぐ対策を取ることが可能になりました。
宇宙線が悪さをする?
また、LSIには「ソフトエラー」による故障もあります。再起動したら治るような一時的な故障のほとんどが、ソフトエラーの可能性があると言われています。
ソフトエラーは、宇宙から来る中性子などの「宇宙線」による現象です。LSIのシリコン原子に中性子が当たって核反応が起こると放射線が出ます。それが、トランジスタのオン・オフの信号が逆になる現象を起こすのです。現在では、たとえ信号が逆になっても正せるように、重要な機器には二重、三重に同様の回路をつくる対策が講じられています。今後に向けて、回路の多重化により増える面積や負荷を減らす研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
京都工芸繊維大学 工芸科学部 設計工学域 電子システム工学課程 教授 小林 和淑 先生
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