光とナノが織りなす新しい物理現象で拓く未来技術
日常の「常識」が通用しないナノ世界
ナノメートルは10億分の1メートルです。今、このような単位で計られる小さな物質(ナノ物質)が最先端技術の主役になっています。それはナノ物質の興味深い性質のためです。例えば、同じ原子配列のシリコン結晶であっても、ナノの世界では形やサイズが少し変わるだけで「異なる種類の物質」になってしまいます。光を当てると何色に見えるか、それすら、わずかな大きさの違いで異なってしまうという、日常の常識が通用しない世界が広がっているのです。
これまで、光をナノ物質に当てたときに起こる面白い現象がたくさん見つかっており、まるでゴールドラッシュのように世界中の研究者が沸き立っています。
電子とナノ物質の関係
電子には小さな粒のイメージがあります。しかしナノの世界に閉じ込められると電子は「波」としてふるまいます。いわば弦楽器の弦の材質や長さによって音色や音程が変わるように、ナノ物質の形やサイズによって電子の波の様子や、その振動の周期が変わります。ナノ物質に光が当たったときに何が起こるかは、この電子の性質によって決まります。そのため、光と電子がナノの世界で互いにどのように作用するのかを物理的に解明し、それをコントロールできるようになれば、ナノ物質に便利な機能を持たせたり、逆にナノ物質で光の性質を変えたりする、全く新しい材料を人工的に生み出せることになります。
光で物を動かす光マニュピレーション
光も微小ではありますが、運動量を持っています。日常世界では摩擦力に負けるような小さな力しか発生しないので、光で物が動くことはありません。しかしミクロン程度の小さい物質であれば、レーザー光で動かすことができます。この性質は「光ピンセット」技術として応用され、バイオ研究などで既に実用化されています。
今は、この技術がナノ物質に使えるかに興味が持たれています。まだまだ難題がいくつもある状況ですが、将来、これまでSF映画などだけで語られてきた夢を実現するため、研究者が日々挑戦を続けています。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 基礎工学部 電子物理科学科 物性物理科学コース 教授 石原 一 先生
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